9月17日、トランプ米大統領は対中制裁関税の第3弾を24日に発動することを表明し、その通りに実行しました。この措置により、総額2000億ドルの中国から米国への輸出に対し、新たに10%の関税が上乗せされることになりました。貿易戦争はいよいよ山場を迎えます。

しかし、その一方で、各国とも株式市場は上昇、日本では日経平均が年初来高値を更新しました。また為替市場では円安が進行しており、いわゆるリスク・オンの動きとなっています。 貿易戦争の激化と金融市場でのリスク・オンは、相反する動きに見えますが、今回はこの金融市場の動きが何を示しているのかについて考えてみます。
景気や企業業績は好調
景気や企業業績が好調なことがリスク・オンの理由であることは間違いありません。日本の4-6月期国内総生産(GDP)は前期比年率3%と好調。また発表を終えた4-6月期の決算も良好で、大手証券各社は日本企業の2018年度の業績見通しを二桁増益に上方修正しました。景気や業績は好調です。
ただ分からないのは、このタイミングでリスク・オンが始まった理由です。景気や業績が好調なことは、以前から報じられていました。また米国の対中制裁第3弾については、第1弾や第2弾に比べて金額が大きいため、世界経済への影響も大きくなると指摘されていました。税率が当初の25%から10%に引き下げられたとはいえ、発動されれば影響が大きいことに変わりはないでしょう。こう考えると、このタイミングでリスク・オンが始まったことには違和感があります。
トランプ氏の求心力低下
私は、金融市場がここでリスク・オンに転じた理由が、トランプ米大統領の求心力に足元で陰りが見られることにあると考えています。そこでまず、なぜトランプ氏の求心力低下がリスク・オンにつながるのかを説明します。
話が少し飛びますが、貿易戦争が終結する条件について考えてみます。貿易戦争を望んでいるのは米国のみで、中国など他国は、米国に仕掛けられて応戦しているだけです。更に米国でも積極的なのは、トランプ氏とその取り巻きなど、一部の保護貿易主義者に過ぎません。このように考えていくと、トランプ氏が望む間は貿易戦争が続きますが、トランプ氏さえ翻意すれば終わるということになります。これが貿易戦争終結の条件です。
では、どうすればトランプ氏を翻意させることができるのでしょうか。そのために必要なのが、トランプ氏の求心力の低下です。トランプ氏に強い求心力があれば、貿易戦争に反対する向きも表立って抵抗できません。しかし求心力がなくなり、米国内で保護主義に反対の声が高まれば、トランプ氏も貿易戦争を継続することが困難になります。最近、トランプ氏の求心力には陰りが見え始めましたが、これが貿易戦争終結の期待感につながり、金融市場でのリスク・オンを促すことになったと見ています。
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