(写真=ロイター/アフロ)
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 ドナルド・トランプ大統領がコミー前連邦捜査局(FBI)長官に対して、政権とロシアの癒着に関する一連の調査の停止を求めたとの疑惑からトランプ氏への批判が高まりました。株式市場では大統領弾劾への警戒感も出始めていますが、今回は過去の大統領弾劾において、株式市場がどのように反応したかを調べてみます。最初に取り上げるのは、米国のウォーターゲート事件です。

 ウォーターゲート事件は、1972年6月に起きた民主党本部への不法侵入事件をきっかけとした一連の政治スキャンダルを指します。当初はほとんど注目されることはなかったのですが、ホワイトハウスの高官の関与などが疑われたことから次第に注目を集め、1973年2月には上院に特別調査委員会が設けられました。

 特に1973年10月にリチャード・ニクソン大統領(当時)が特別検察官のアーチボルト・コックスの解任を求めたことは、司法への介入として批判を浴びました。これをきっかけに大統領弾劾を求める動きが加速、最終的にニクソン氏は辞任に追い込まれることになりました。なお、ニクソン氏は下院の弾劾決議前に辞任したため、実際には弾劾は受けていません。

S&P500種株価指数の推移(週次)
S&P500種株価指数の推移(週次)
出所:ブルームバーグより大和住銀投信投資顧問作成
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 この間の米国株の動きを見ると、事件発生当初のS&P500種株価指数は小幅の動きに止まっており、事件の影響はほとんど見られません。

第4次中東戦争と第1次石油危機がもう1つの悪材料

 しかし、政府高官の関与が濃厚となった1973年初め以降、S&P500は明確な下落基調となり、ニクソン氏がコックス氏の解任を謀った1973年10月には下げ足を速めました。ニクソン氏が大統領を辞任した2ヵ月後の1974年10月になってやっと下げ止まったことを見ても、この間の米国株の動きはウォーターゲート事件に大きな影響を受けたといえるでしょう。

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