求められるのは長期的な成長を促す政策

 もちろん、政策が不要というわけではありません。ただし、求められるのは、目先の景気や市場を意識した政策でなく、長期的な成長に貢献できる政策であることを認識する必要があります。その意味で注目されるのは最近話題の介護や保育関係の支援拡充策です。

 これらは経済に直接関係しないテーマであるため、普段、市場に影響を与えることはあまりありません。しかし、日本が抱える最大の構造問題である人口減少に対処する上で、どちらも放置することができないテーマです。

 世界の年金やソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)などの機関投資家は今、日本について「失われた20年は終わったが、次の20年はどうか」といった視点から注目しています。

 こうした視点に立てば、消費増税の先送りなどは、どうせ引き上げるのであれば、大した問題ではありません。しかし、今まで人口減を放置していた日本政府が本格的にこの問題に対処すべく動き出したとなれば、これは日本に投資すべきかどうか、真剣に検討する必要があるとなるでしょう。外国人材(移民)の問題についても同じことが言えます。

 これまで安倍首相はこうした問題に必ずしも前向きではありませんでした。これは今まで日本では、出生率目標や移民などの議論がタブー視されていたため、支持率などへの影響を考えて消極的にならざるを得なかったためと考えています。

 しかし、第2次安倍政権が発足して以来の政権運営を経て、結局これらの問題は避けて通れないと感じた。これが最近こうしたテーマに積極的に取り組んでいる理由でしょう。であれば遅かれ早かれこうしたテーマが株式市場でも取り上げられることになるのは間違いないと見ています。

ベストシナリオは育児・介護支援のための消費税率引き上げ

 26日から27日にかけてG7の伊勢・志摩サミットが予定されています。サミット後に安倍首相は消費増税の再延長を表明するというのが現在有力と見られているシナリオです。このシナリオであれば、市場はいったん円安・株高に反応すると思いますが、短期的なものに止まると見ています。既に述べたように、消費増税先送りは景気に対して一時的な効果しか持たないためです。

 株式市場にとって最も望ましいのは育児・介護支援のために必要な財源であることを安倍首相が説明した上で、予定通り消費税率引き上げを表明する。これがベストシナリオです。

 残念ながらこのシナリオが実現する可能性は高くありません。ただ、足元で、安倍首相が増税先送りに慎重になっていることを示唆する報道があります。

 例えば、萩生田光一官房副長官は5月24日、ロイターのインタビューで消費増税の時期について「特別な事態が起きない限り、予定通りやる方が国際社会の信頼を得られる」と述べました。

 また、柴山昌彦首相補佐官も同じ24日にロイターに対して「来年4月に予定されている消費税増税の是非は、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の議論なども踏まえて判断すべき」「そのうえで予定通りに増税し、経済の不安定要因に的確な財政措置で対応するとの考えは十分に成り立つ」と述べています。前述のように麻生財務相もルー米財務長官に予定通りに税率を引き上げると説明しています。こうなると、税率引き上げの方がメインシナリオにも見えます。

 おそらく、安倍首相もまだ最終判断をしかねているものと思われます。ベストシナリオに沿った決断がなされるのであれば、その時の日本株は「買い」ということになると予想しています。