政策への期待感はなぜ消えたのか?

 こうした動向を見て、金融緩和や消費増税延期などへの期待感は多くの投資家の間で既に消え去ったと考えています。これは投資家がこうした目先の景気・市場対策でしかない政策にはせいぜい一時的な効果しかないことを、身をもって体験したためです。

 例えば、もっとも市場で注目度が高い金融緩和が効いたのは2014年10月の追加緩和まで。今年1月には追加緩和(マイナス金利)を決定して円高・株安、4月は緩和を見送って円高・株安です。やってもダメ、やらなくてもダメでは期待がなくなって当然でしょう。

 消費増税の先送りもそうです。安倍晋三首相は既に1回税率引き上げを先送りしていますが、それで景気がよくなったという実感はありません。今回先送りしても、1~2年後にはまた同じことになると思う人が多いでしょう。

 日本の金融市場で政策への期待感が高まったのは、黒田東彦日銀総裁の異次元緩和の印象が強かったためです。しかし、当時の円安・株高は金融緩和だけで生じたわけではありません。

 当時は民主党政権の決められない政治の下で経済だけでなく社会も停滞しており、日本株は売られ過ぎ、円高も行き過ぎという状況にありました。その後の円安・株高はその修正によるもので、異次元緩和はそのきっかけになっただけなのですが、あまりにも鮮やかに見えたため、市場参加者は金融政策が万能であるような錯覚に陥ってしまいました。

 しかし、株安も円高も既に修正された今、当時のような華々しい効果を期待できるはずがありません。逆に今年に入ってから金融政策は失敗続き、追加緩和への期待感は霧散してしまいました。

 増税先送りや財政出動、為替介入なども同じで、景気や金融市場にとって一時的な効果しか期待できません。こうした目先の景気や株安、円高対策などへの期待が剥落するのは当然のことで、むしろ遅すぎたぐらいといってよいでしょう。

ファンダメンタルズに回帰せよ

 今の日本株や為替レートを動かしているのは目先の政策に関する思惑でなく、世界的な金融市場を取り巻く環境です。例えば4月に日銀が追加緩和を見送った後、一時1ドル=105円台まで円高が進み、円売り介入を巡る憶測がマスコミを賑わしました。

 しかし、結果的には介入も追加緩和もないにもかかわらず、円はドルに対して緩やかながら下落しています。これは米国の経済指標が改善し、早期利上げ観測が再燃したことが理由です。

 米景気が悪化して米国の利上げがさらに遠のけば、政府・日銀が介入したとしても円高を食い止めることはできないでしょう。逆に足元のように米景気が改善して利上げ観測が強まれば、為替介入や金融緩和がなくても円高が進むことはありません。

 今まで、市場参加者は「まず政策ありき」の視点から考えることが多かったと思いますが、最近はファンダメンタルズに立脚した発想に戻りつつあると見ています。これが日本株が政策離れを始めた理由です。