注目したいのはこの期間の為替レートです。2015年10~12月のドル円レートは平均で1ドル=121円、2016年は109円です。1ドルあたり12円という決して小さくない円高にもかかわらず、日本企業は増益を達成しました。この増益には世界経済の安定や原油をはじめとする資源価格の持ち直しなどいくつかの理由がありますが、最も重要なのは個々の企業が努力し、結果として日本企業の全体の収益力が向上したことです。

 先ほど述べたようにこの期間は減収増益ですから利益率が高まったことになります。岡三証券の分析によれば、売上高経常利益率は2015年10~12月が7.7%、2016年は8.6%です。売上高が変わらなければ、この経常利益率の上昇分だけで経常利益の総額は12%増加することになります。

 この収益力の向上は個々の企業の努力によるものです。例えば日立製作所は物流や金融など本業と関係が薄い子会社を切り離したことで、10~12月期は連結で10%減収ながらも増益。三井化学も、収益率が低い商品を地道に見直した効果により、今期は10%減収ながらも最高益を更新する見通しです。

 キヤノンが決算に伴って発表した2017年度の業績見通しは3期ぶりの増益を見込んでいます。これはスウェーデンのネットワークカメラ企業アクシスや東芝の医療機器部門の買収など、ここ数年進めてきたM&Aが業績に寄与し始めたことが理由です。

 三井化学のようなボトムアップ的な収益改善は日本企業のお家芸ですが、キヤノンや日立のようなトップダウン的なM&Aや事業ポートフォリオの見直しはリーマン・ショック前の日本企業には見られないものでした。しかし、今では多くの企業がこうした手法を積極的に活用しています。日本経済新聞で「大企業のM&A急増」(3月24日)、「日本企業の海外M&A、最高の11兆円」(4月3日)など日本企業のM&Aを報じる記事が増えているのはこの表れと言えます。

 リーマン・ショックが起こる前、内製化へのこだわりや意思決定の遅さが、日本企業の欠点としてしばしば指摘されました。しかし、こうした欠点はかなり修正されました。このような官民の努力により、競争力の喪失という2番目の構造問題も既に解消できたと考えています。

 3番目の政治の機能不全についても同様。2012年に第2次安倍内閣が発足して以降、日本で首相交代はなく、支持率も高いままです。日本経済新聞が実施した直近の世論調査(3月24~26日の調査)が示す内閣支持率は、森友学園問題があったにもかかわらず60%と、前回と同じ値を維持しました。欧米と比べて日本の政治が安定していることは明らかです。

長期停滞から長期成長、長期上昇へ

 単に安定しているだけではありません。安倍首相は他国のトップにも頼りにされている模様です。2月24日付の読売新聞はオーストラリアのターンブル首相が安倍首相に非公式に電話したと報じました。電話の理由について「訪米でトランプ氏と信頼関係を築いた安倍首相から、関係改善の糸口を探りたかったのだろう」という政府関係者の発言を紹介しています。

 政治はもはや、日本にとって構造問題ではなく、強みの1つと考えるべきでしょう。

 このように3つの構造問題は既に解消され、それぞれ健全な金融システム、回復した競争力、安定した政治と安倍首相のリーダーシップに変わりました。

 以上を踏まえて、失われた20年は終了しており、日本の経済や株式市場は長期的な成長、上昇局面にあると考えています。投資家は目先の株式市場の動向に一喜一憂することなく、この観点から日本株への投資を考えるべきでしょう。