著名経済学者を招き先送りの地ならし

 こうした中、従来断固として税率引き上げを実施するとしていた安倍首相の姿勢にも変化が出てきました。従来は「リーマン・ショックや大震災級の事態にならない限り予定通り引き上げる」と説明していました。それが最近は増税先送りのハードルを大幅に引き下げるような発言が増えています。例えば3月18日の参院予算委員会では「経済状況を注意深くみていきたい。経済が失速しては元も子もなくなる」と述べました。

 プリンストン大学のクルーグマン名誉教授やコロンビア大学のスティグリッツ教授など著名経済学者を招いて意見を聞いています。増税先送りを是とするための地ならしのようにしか見えません。

カギを握るのは1~3月のGDPと公明党

 ただし、安倍首相が消費増税の再延期を最終的に決断するかどうかは現時点では不透明です。カギを握るのは1~3月のGDPと公明党です。

 1~3月のGDPは5月18日に発表される予定です。もし1~3月に続いてマイナス成長となれば、消費増税の先送りの判断を後押しすることになると思います。一方、プラス成長であれば、先送りの決断は難しいと思われます。

 もう1つの公明党について。前述のように公明党は消費増税の再延期に慎重な立場です。消費増税先送りのために公明党の了承を得るのは意外と高いハードルであるように見えます。

 公明党が先送りに反対するのは、2017年4月の消費税率引き上げに向けて自民党から勝ち取った軽減税率の意味が薄れるためです。公明党は軽減税率導入のために自民党と協議に協議を重ね、自民党に主張を飲ませることに成功しました。これは昨年の安全保障法案審議で自民党に譲歩したことへの代償であり、公明党が参院選を戦ううえで掲げる実績でもあります。

 しかし、消費増税が再延期となれば軽減税率導入の意義は薄らぎます。下手をすると軽減税率そのものが白紙となる恐れすらあります。このため公明党としては、おいそれと増税先送りに合意するわけにはいきません。また自民党も、公明党が首を縦に振らない限り、消費増税を再延期するのは困難でしょう。今後も選挙や憲法改正審議などで公明党の協力が必要になりますから。

 以上のような理由から、安倍首相としても消費増税の再延期は簡単には決断できず1~3月のGDPと公明党次第になると考えています。