安倍晋三首相とドナルド・トランプ大統領による初の日米首脳会談が2月10日に行われました。結果は日本側から見て想定外の出来。安倍氏には100点満点、いや200点の評価が与えられてもおかしくないと考えています。今回は日米首脳会談を振り返ります。首脳会談及び共同声明のポイントは以下の通りです。

  • 核・通常戦力による日本防衛への米国の関与は揺るぎない
  • 沖縄県・尖閣諸島に米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約5条が適用される
  • 南シナ海などでの力による現状変更の試みに反対
  • 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)問題は名護市辺野古移設が唯一の解決策
  • 麻生副首相とペンス副大統領らによる分野横断的な経済対話の枠組みを創設
  • 自由で公正な貿易ルールに基づく2国間と地域の経済関係の強化へ議論

出所:日経新聞、2月12日

 日本側の対応を高く評価する理由は3つあります。1)事前に懸念されていた通商や安全保障に関する米国からの要求がまったくなかった、2)通商や安全保障において米国がアジア・太平洋地域に引き続きコミットすることを確認した、3)安倍氏とトランプ氏の個人的信頼の強さを世界に見せつけた、の3つです。

 多くの人が今回の首脳会談のなりゆきについて事前に抱いていた不安は、米国が抱える貿易赤字の犯人として日本が被告席に座らされ、米国が検察兼裁判官として判決を下す、あるいは罰則を決めるというイメージでした。

 予想される“罰則”として挙がっていたのは、安全保障においては数値目標を設定した上での防衛費の増額(名目GDPの2%など)や駐日米軍の費用負担増額、経済では日米2国間での自由貿易協定(FTA)交渉や円安是正などでした。

懸念された“罰則”はなかった

 しかし実際にはこうした案件が首脳会談の俎上に載ることはありませんでした。経済については新たに「日米対話」を設けることになりましたが、これはFTAとは異なります。日本は麻生太郎副首相、米国はマイク・ペンス副大統領をトップとしてエネルギーなど個別の分野で広く日米の協力を図るものです。

 ペンス氏はトヨタ、ホンダなどの工場があるインディアナ州を地元とする親日派です。彼がトップである以上、この日米対話が日本に大きく不利なものになることを懸念する必要はないと思われます。

 為替は両国の財務相の間で継続的に協議することになりました。財務長官に指名されているスティーブン・ムニューチン氏はゴールドマンサックス出身で金融市場には精通しています。

 同氏は為替について、基本的には「強いドルは国益」との立場です。トランプ氏と食い違いがないようにするため、「ドルは高すぎる」と発言することもありますが…。ムニューチン氏が担当なので、日本に円安是正圧力がかかる可能性は小さそうです。

 安全保障では、尖閣諸島が日米安保条約の対象となることを確認。名指しはしていませんが中国の海洋進出への牽制なども盛り込みました。北朝鮮に対しては日米が共同で対処すると宣言。さらにトランプ氏から「米軍駐留を受け入れてくれていることに感謝している」の一言を引き出しました。安全保障関係については「満額回答」とする報道もあります。

 安全保障に関しては、先日訪日したジェームズ・マティス国防長官の意向が働いていると考えられます。彼に限らず軍出身者には、中国による海洋進出への警戒感が強く、他方、日米同盟への評価が高いという傾向が一般的にあります。マティス氏が日本の肩を持ってくれて、こうした厚遇になったと思われます。

 このように経済、安全保障の両方において、恐れていた要求は1つもありませんでした。これだけでも今回の首脳会談は日本から見て100点満点です。