矢部:その通り。教育ならぬ「鏡育」という発想を持たないと部下はついてきませんよね。管理者や主任で「下の人が言うことを全然聞かない、動いてくれない」と言う人がいたら、こう言います。「あなた達が部下の前に立ったときから、教育は始まっているんだよ」と。「あなたの言葉、目や体の動き、仕事への熱意。そういうものが全部、見られている。『やれ』と言って動かない部下は、鏡に映ったあなたの姿なんだ」と。

入山:鏡育…。素晴らしい言葉ですね。

矢部:マネジメントは100の組織があれば100通りのやり方があるんですが、究極的にはマネジメントは、ビジョンをトップが示し、人、組織が動き結果を出してくれればいいんでしょ。その際に、マネージャーが君臨し威張って組織が動くのなら、威張ればいいと思います。ただ、私は威張っても動かないと思っただけなんです。

 この対談記事のテーマとして「アラ還女性職人の楽園」というのをうかがっていますが、おかげさまで「楽園」というより「野生の王国」みたいになりましたけどね(笑)。

入山:ハハハ。ほかにも矢部さんならではの組織を動かす秘訣がありそうですが。

矢部::「認める」ということを大切にしてきたわけですけど、上の人間が「よくやってるね」と言い続けても限界があると考えました。そこで社会に、お客さまに認めてもらうこと、それにはマスコミの力を借りようと考えたんです。

 以前は、TESSEIを取材したいという話をもらってもすべて「JR東日本へ聞いてください」とやっていたんです。でも、多くの人に我々の仕事の様子を見てもらおうと方針を変えました。全部うちでやるんだと一念発起したわけです。目的は、仕事の売り込みではありません。内生的動機を高めることです。

 香取慎吾さん、松岡修造さん、石原良純さん、山口もえさん、中川家の礼二さんなど、いろいろな人に取材に来てもらいましたが、アラ還女性ばかりの現場のモチベーションは上がりました。

 TESSEIの仕事は清掃ですから、きつい、汚い、危険の三拍子がそろった仕事で夢も希望もないものだった。でも、世界のTESSEIを目指すんだとなれば、話は変わるでしょう。

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