矢部:そのための、厳しいルールやマニュアルがあります。私はまずこれをきちんと守ることのできる組織にしようと思いました。このことが強い組織をつくり、その後のさまざまなチャレンジを可能にしたと思っています。

入山:厳しい方から入っているんですね。

矢部:5Sとは、整理、整頓、清掃、清潔、しつけのことで、安全、サービス等を創造するための会社の基礎となる要素なのですが、なぜここにしつけが入るのかというと、会社組織には秩序が必要だからです。

入山:しかし、JR東日本からTESSEIに合流した矢部さんが、いきなりしつけと言って浸透するのですか。

矢部:もともと鉄道の世界はしつけの世界で、出された指示は聞けというのが基本です。しかし、私がTESSEIに来た当初の現場の組織形態は、指示の通りにくい、中途半端なものでした。

入山:どんな組織だったのでしょう。

矢部輝夫代表の著作『<a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4860636570/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4860636570&linkCode=as2&tag=n094f-22" target="_blank">奇跡の職場 新幹線清掃チームの働く誇り</a>』(あさ出版)
矢部輝夫代表の著作『奇跡の職場 新幹線清掃チームの働く誇り』(あさ出版)

矢部:私どもはチームで仕事をします。1チームの構成は22人なのですが、そのチームのリーダーとして主任が3人いるトロイカ方式でした。主任という立場ですと、部下に対して「ごめんね」と言ってしまうような甘さが生まれます。ですから、3人の主任の内の一人を、管理者にしました。管理者手当が必要になるので、お金が多少かかりますが、しかし、管理者には21人の部下を徹底的に厳しく指導させました。

 これがチューター制度です。また、22人のチームは全部で20くらいあるのですが、それを束ねて統括するインストラクターも増強しました。この人たちにきちっと指導をしてもらって、本社はバックアップに専念します。本社がすることは、投資と人事とルール作り。あとは現場に任せます。と、口で言うだけでなく、そうなるように組織を作り替えました。

入山:しつけも現場に任せたのですね。

しっかりした上下関係が大事

矢部:そうです。

入山:そのためには、しっかりした上下関係が必要だと。

矢部:そうなんです。でも、この部分はあまり注目されませんし、見学にいらした企業の方も「縦型ではなく、フラットな組織にしないとならないのでは」とおっしゃいますが、それでいいならいいでしょう。ただ、我々はこうやろうと決めましたし、そうしないとこの組織は動かないのです。

入山:インストラクターやチューターに抜擢された方々は成長しますか。

矢部:もちろんです。少し時間はかかりますが、リーダーの自覚を持てば、リーダーとして育ちます。リーダーは組織にとって極めて重要な役割を担います。そして現場第一線のリーダーこそが会社浮沈のキーマンです。手取り足取り教育することだけではなく、苦労しながらリーダーシップを身につけてもらう。私自身がそうした考えをもつ先輩たちに育まれてきたからです。(後編に続く)