入山:アラ還女性に話を戻しますと、シルバー人材の活用はこれからの企業の大きな課題ですね。

矢部:銀の卵ですよ。現在は定年退職という制度があって、ある年齢に達したら強制的に仕事が奪われます。その一方で、人手不足と言っています。

 定年という制度はいつできたのか。江戸時代は、若いうちに一生懸命働いて、その後は隠居して江戸時代の文化を支えた人たちもいますが、定年制度なんてなかったはずですよ。明治からじゃないんですか。

入山:文明開化によって、輸入された文化なんですね。

矢部:そうかもしれません。それにこれまでは、若い人がたくさんいたので、年功序列で給与が高くなった人を辞めさせて、若い人を雇うにもいい制度でした。しかし今は、辞めた人の代わりがいません。同年齢でもものすごく元気で若い。それなのに、定年退職だけは残っている。

 TESSEIでは63歳で定年ですが、私が来てから元気が良くてやる気があれば、原則65歳まで働ける制度に変えたのですが、それ以上も働けるようになっています。65歳過ぎても働いている人もいますし、以前は70歳過ぎの人もいたんです。職人は、いくら歳をとってもいいんです。

 入山さん、新しいレストランができたと想像してみてください。内装が素晴らしくて雰囲気がいい。ウエイトレスさんの笑顔も対応も心地よい。でも、もし料理がおいしくなかったらどう思いますか?

 味が良くないのに笑顔で「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」「またのお越しを」と言われても、困ってしまうでしょう。レストランで肝心なのは、料理です。おいしくて、人の心をあったかにする料理なんです。

経営の体幹を鍛える

入山:清掃で言えば、まず早くて正確で完璧な掃除があって、さらに挨拶も素晴らしいということですね。

 確かに、TESSEIはおもてなしの会社ですが、世間で言われる、言葉だけが先行したふわふわしたおもてなしとは一線を画しています。

矢部:上っ面の「おもてなし」だけで終わってしまう会社があるとすれば、それはおもてなしをしっかり定義せず、感覚的に「こういうものだ」と思っているせいです。私たちは「我々の最高のおもてなしは、早くて正確で完璧なお掃除だ」と言い続けています。これが私たちの本業であり、会社の体幹、芯になる大切な仕事ですからね。

入山:なるほど。体幹をまず鍛えないとならない。

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