河合薫氏(左)と入山章栄氏(写真:稲垣純也、以下同)

国を挙げて女性活躍を訴える現代のニッポン。マイノリティの苦悩を理解しない「ダイバーシティ」施策ほど害になるものはない。日本のリーダー層に欠けている視点は何か。入山章栄・早稲田大学ビジネススクール准教授が、健康社会学者の河合薫さんに迫る対談、後編。(構成:片瀬京子)

入山:河合さんの話を伺いながら経歴を拝見すると、ずっとアウトサイダー、チャレンジする側にいたように見えます。

河合:アラバマから日本へ帰ってきても帰国子女としてマイノリティでしたし、今もマイノリティですね(笑)。ただ、CA(客室乗務員)のときにどこにいっても「国際線のスッチーなんだって」って肩書きで見られるのがイヤで、「自分の言葉で伝える仕事がしたい」なんて辞めちゃったもんですから。コレ(右腕をポンポンと叩く)で生きていってやるって、覚悟だけはできました。ですから今も、どこの大学にも所属せずに地味に研究を続けています。

入山:大学のような大きな組織に所属しようと思ったことはないんですか。

河合:博士課程を修了するときに、正直少し迷いました。でも、なぜCAを辞めたのか?って初心に立ち返ると、なしだなって。もともと協調性がないので、自由に泳いでないと息苦しくてダメになると思います。

 ただ、日本では大きな組織に所属していないと、最初の間口はものすごく狭くなるので、正直しんどいです。そこは地道にやるしかないんですよ。結局は、その先で何をするか、何ができるか、で決まりますから。所詮、属性は属性でしかない。中身を磨くしかない。どんなに立派な組織に所属しても、中身がなければ淘汰される。どこにも所属していないと、多少、踏ん張る力と忍耐が必要になりますけど、狭く険しい道を歩けば歩いた分だけ鍛えられます。

 でもおそらく他の人の目には、スッチー、ニュースステーション、日経ビジネスオンラインと来たら、楽をして王道を歩いてきたようにも映るでしょうね。もちろん私に機会を作ってくれた方たちのおかげですが、その機会を生かすために、ちょっと頑張ってあがいてる自分もいるんですよ。

「女で東大博士」だけでは渡れない

入山:本当は、あがいているのは「ちょっと」ではないですよね。

河合:「女で、元スッチーで東大だったからでしょ」という人もいます。女をウリにして飯が食えるなら、エステに通い詰めてピカピカにして、もっと色っぽくなるようにアレコレ頑張ります(笑)。でも、残念なことに世の中そんなに甘くない。お金を稼ぐって、ものすごく大変なことです。仕事ひとつひとつが、次の仕事の営業ですから。常に120%を目指して仕事しないと。それでも上手くいかないことの方が多いんですから。

入山:それは、河合さんが王道でない道を、いろいろとブチ壊しながら来たから言えることでしょうね。一方では王道のど真ん中を歩いてきたような人たちには、河合さんのような人を理解するのは難しいかもしれません。つまり、先ほどの「ダイバーシティを受け入れる側の問題」に繋がります。

河合:個人の能力を最大限に引き出し、企業の生産性を高めるには、環境からのアプローチと個人からのアプローチがあります。環境が変われば確かに人は変わりますが、しかし、環境だけでは変わらない部分があります。やはり、個人にアプローチして、ものの見方、受け止め方を変えなくてはなりません。