入山:なるほど。突き詰めると「自分を否定するような人」も受け入れないと、ダイバーシティを重視しているとは言えない。でもそれは、価値観・考えを多様化させるタスク型ダイバーシティの究極の姿かも。

河合:そうです。でも、案外それが難しい。私も日経ビジネスオンラインの連載で、否定的なコメントをされることが多々ありまして。結構、落ち込むわけです(笑)。でも、不思議なもので、それに対してまた別の人から意見がついたり、コラムを肯定的に評価してくれたりするコメントもつく。すると私も少しだけ気持ちに余裕ができて、否定的な意見を受け入れられるようになるんですね。「ああ、確かにそういう見方もできるよね」って。別の角度から物ごとが見られるようになる。これが「多様性」を受け入れるってことですよね。といっても、こんな覚悟がもてるようになるには、相当の年月がかかりましたけれど(苦笑)。

入山:実は私も最初の本を出したときは、アマゾンのレビュー欄が結構荒れたんです。「アメリカでは経営学者はドラッカーを読まない」などと書いたので、それで反発を感じた人もいたのかもしれません。でも私はそれでいいと思っていて、一人ひとり異なる価値観・考えがあるんだから、それは全然オッケーなのです。

言っている側にとってはすべて「事実」

入山章栄(いりやま・あきえ)氏
入山章栄(いりやま・あきえ)氏

河合:そうですか。でも、作家の渡辺淳一さんも、直木賞を受賞されたときに「エロ小説」と言われてショックを受けられたそうですよ。私はその渡辺さんに「俺だっていろいろ言われたんだから、君もいくら何を言われても大丈夫」と励まされたことがあります。どんなに事実や自分の意図とは違うことを言われても、言っている側からしたらそれは事実なんですよ。

 では、その人にとっての事実を私がどう受け止めるか。「そういう話は聞く必要がない」とするか、「あ、それもあるよね」と未熟な自分を受け入れ、その人たちを超えるようなものを書けるようになるのかは、自分次第だと思います。難しいですけどね。でも、そこで耐えて踏ん張らないと、最後に負けます。踏ん張れば、少しだけ成長できる。

入山:日本企業でも、踏ん張ってダイバーシティを高めようとしているところが見られるようになっています。松本晃会長が本気でダイバーシティに取り組んでいるカルビーはいい例でしょう。

河合:ただ、ミスマッチは必ずあります。これは恋愛と同じで、たとえば私が「私はこんなに完璧です」と入山さんにアピールしたとしても、入山さんが私を受け入れてくれるとは限らない。「僕は○○さんのほうが完璧だと思う。ごめんね」ということは普通にあるでしょ。

 そこで私が、その“○○さん”に勝つために努力すれば、入山さんをゲットできるかというとそうはなりません。でも、捨てる神あれば拾う神ありで(笑)、必ず自分を好きだと言ってくれる人は現れる。人と比べるんじゃなくて、自分を磨き続ければそれを認めてくれる人はいるんですよ。

 本来、私たちがすべきは他者との競争ではない。米国も一見、競争社会に見えますが、自分を限界までMAX(最大)に引き出しているだけ。自分の能力をマックスに引き出し、最高のパフォーマンスをするためにもがき続ける。自己内競争です。それに、自分がマックスになるべくきちんとやっていれば、ミスマッチも受け入れることができると思いますよ。

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