全6078文字

トレーラーハウス型仮設の新時代

 北海道勇払郡の安平町とむかわ町、厚真町は隣り合うように位置しており、とくに被害の大きかった地域だ。トレーラーハウス型応急仮設住宅の導入をまっさきに検討したのは安平町町長の及川修一郎氏だ。

安平町町長の及川修一郎氏

「戸別私有地に仮設住宅を建てる。前代未聞といっていいのですが、町長はどのようにお考えですか」(渡辺氏)

「地域柄、麦類や雑穀、豆類やメロンなど、農業が盛んです。被災した町民の方々からも『勤め人であれば自宅から少しくらい離れた場所に移り住んでもやっていけるけど、農家や畜産の場合はそうはいかない』という話を多くの被災者から聞きました」(及川町長)

「そうしたところから戸別敷地内にトレーラーハウス型の仮設住宅導入を決定したわけですね。でも前例のないことですから大変だったのでは?」(渡辺氏)

「おっしゃるとおり、災害救助法による応急仮設住宅は自治体が管理する公の土地に建設することになっています。ただ、必要なのであればやりようはいくらでもある。例えば被災したお宅の庭先を町が一定期間に限り、借り上げたことにすればいいだけのこと」(及川町長)

「そのとおり、でもこれまでそうした判断ができる組長がいなかった」(渡辺氏)

「9月6日、発災の直後から一定数の応急仮設住宅が必要になることはわかっていました。だからすぐに情報収集を始めた。その中にトレーラーハウス型仮設住宅の情報もあったわけです。寒冷地での使用にも十分に耐えられるし、その他のスペックも申し分ない。ということで隣り合う『むかわ町』と『厚真町』、そして我が町(安平町)の三町合同というかっこうで北海道に要望書を出し、導入が実現しました」(及川町長)

「応急仮設住宅の使用期限は2年が基本です。プレハブと違い、トレーラーハウスはその後のリユース(再利用)が可能。そうしたことも判断の理由になったのでは?」(渡辺氏)

「おっしゃるとおりです。トレーラーハウスは宿泊施設として備蓄することも可能ですよね。手ぶらでに行って、ちょっと贅沢なキャンプをする『グランピング』が北海道でも流行し始めています。そうした場所で観光施設として使うことができるかもしれません」(及川町長)

「そのような考えを持つ組長が増えてくれると、全国でトレーラーハウスの備蓄が進みます。及川町長にはそのさきがけになっていただきたい」(渡辺氏)

「被災は大きなピンチですが、私の選挙公約は『ピンチをチャンスに』でした。今回のピンチを教訓に、さらに住みやすいまちづくりを心がけていこうと思っています」(及川町長)

安平町役場の町長室にて