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トレーラーハウス型仮設住宅、住民の話

 実際にトレーラーハウス型の仮設住宅に住むことになった北海道勇払郡安平町の竹田典子さんに話を聞いた。

安平町で農業を営む竹田典子さん

「うちは農家で、これからの季節はビニールハウスでの作業が主です。積もった雪をそのままにしておくと、すぐに潰れてしまう。毎日のように様子を見て雪下ろしなどの作業をすることが必要なんです。だから離れた場所には住めません」(竹田さん)

「同じ町内でも、プレハブ仮設のある場所はここからだと遠いのですか?」(渡辺氏)

 「とてもじゃないけど通えない。住んでいる場所から畑やビニールハウスが見えるくらいの距離が理想です」と語る竹田さん。トレーラーハウス型の仮設住宅は自宅の庭先に置かれている。

「そういう意味では、この仮設住宅はほんとにいいですね」(竹田さん)

 農業を営む家は、比較的広い敷地を有している場合が多い。その敷地内に建てた仮設住宅に住むことができれば便利であることは言うまでもない。

 一方、住宅密集地や集合住宅が被災した場合、仮設住宅を“庭先に建てる”ことは物理的・空間的に不可能であることが一般的だ。限られた土地に大量の個数が必要となる。当該自治体の持つ公有地などを確保し、プレハブ仮設の出番となる。

「そもそもプレハブ仮設は長屋形式が基本です。だからこそ『迅速・大量』を実現できる。◯◯さんの家の庭先に一戸建てのプレハブ仮設を建設する。ということはコストが高くなりできない仕組みになっている」(渡辺氏)

 『迅速・大量』はプレハブ仮設の大きなメリットだが、戸建て対応は難しい。

「逆にトレーラーハウスの場合、ストックしている数に限りがあるので『来週までに1000戸用意しろ』といったオーダーには対応できませんが、『◯◯さんの庭先にひとつだけ持ってきてくれ』というオーダーには即応できる」(渡辺氏)

 前出の竹田さんも次のように語る。

「うちの場合はプレハブ仮設ははじめから考えませんでした。自宅の庭に置けるからこそ、このトレーラーハウスをお願いしたんです。屋内も広々としていて夫婦二人暮らしになら大丈夫」

 ところが竹田さんは「ちょっとがっかりしたこともあった」と声のトーンを落とした。

 庭先にトレーラーハウスがやってきたのは鍵の受け渡しのあった日からひと月近く前のことだった。トレーラーハウスの現物は届いているのに、使うことができない。その姿を見つめるだけの日が続いたというのだ。