ざっくり情報が初動の要

「そう、そのざっくりした情報がすごく大切なんです。LINEは写真も送ることができます。決壊した堤防、集まった複数の被災民、ケガの状況、倒壊の程度、文字や言葉で説明するより写真を1枚送ることで状況をすばやく、しかもよりリアルに伝えることができます」(江口氏)

「よくわかります。かつて阪神・淡路大震災があったときに、各交番の警察官に『被害の状況、被災者の状況を報告しろ』という命令がくだった。だけどいっこうに情報が上がってこない。なぜかというと、警察官たちは倒壊した建物の正確な住所や被災者の正確な数などをいちいち確認していたというんです。それがはっきりするまで報告できない。日常、警察官はそう訓練されているからしかたない。でもこれじゃ初動がどんどん遅れてしまう。おかげで被害を広げたとも言われています」(渡辺氏)

「そうしたときに、『ざっくり情報を写真で送れ』とすれば、LINEはすこぶる有用なツールとなるわけです」(江口氏)

「阪神・淡路大震災の時、神戸市は職員にビデオカメラを持たせ、災害があった場所を歩きながら映像を撮らせる、という試みもありました。その映像から地域の被害の状況をざっくり把握する。いったん大規模災害が起こると、119や110などに救助依頼が大量にくる。その全てに対応することは不可能です。そこで、職員の持ち帰った映像で被害状況をざっくり把握し、どこに何人の救助隊を送ればいいのかを判断する。そうした取り組みもかつてあったんですが、なかなか定着しませんでした」(渡辺氏)

「LINEを使えばそれをさらに大規模に展開できます。現在そうしたシステムの開発をまさに行っているところです」(江口氏)

「日常的に使っているからこそ、いざという時にも使いやすい。被災時のLINEの上手な使い方ってどういったところでしょう」(渡辺氏)

「逃げるときにはぐれてしまったら、自分がいる場所の位置情報を送る。また座標を指定できるので『ここで落ち合おう』などの情報交換も簡単です。また家族の血液型とか銀行口座とか、重要だけど案外覚えてない情報を『ノート』という機能を使って保存しておくと、家族やグループでの共有も簡単です(『災害時に役立つLINEの活用方法』参照)」(江口氏)

「簡単だとはいいますが、ゼロから訓練するとなるとけっこう手間です。でも日常使いのLINEだからこそすぐに手が出る。そこがいい」(渡辺氏)

「ですから我々も、『災害用のサービス』は開発しません。日頃から使っている機能を災害時にも上手に使ってください、というスタンスです。あと繰り返しになりますが、LINEだけに頼らないこと。複数のチャンネルのひとつとして考えておくことが重要だと思います」(江口氏)

 取材を終えて渡辺氏は次のような感想を述べた。

「LINEだけに頼らないこと――江口さんのこの言葉は重要ですね。そもそも停電して電池が切れてスマホが使えなくなったときなどLINEも同時に無力化されます。地域の結びつきや自力で助かる訓練、努力を日頃から意識しておくことが大切なのだと思いますね」

 この取材後、“防災の鬼”はLINEに登録した。