LINE&熊本市、訓練の内容とは

「2017年の第1回目の訓練では、職員の安否確認と参集訓練でLINEを使いました。普段から使い慣れているツールなので、使い方に関する教育コストがほとんどかかりません。また、特に初動での迅速で正確な情報伝達が可能であることがわかりました」(江口氏)

「警視庁の防災ツイッター(『フォロワー激増!警視庁のツイッターは役立つ?』『警視庁の柔らかツイッター、目指すは100万人!』参照)を取材したときにも思ったのですが、普段から使っているということがやはり大きい。大災害でパニック状態のときに、自治体が独自に作っている防災ページなんか見に行く人はいませんよ」(渡辺氏)

「2018年の第2回は、災害対策本部と避難所のコミュニケーション手段にLINEを使う訓練でした。特に熊本市の中央区では、電話がつながらないという想定でLINEだけで伝達をするという試みを行いました。参加してくれた方々にアンケートをとったのですが、そこからいくつかの課題が見えてきた」(江口氏)

 使い慣れたLINEだからこそ、電話と同等にスムーズに情報を伝達できた。これについては申し分ないが、スムーズすぎるがゆえの欠点もあったという。

「LINEの伝達は書き込みに対するリプライで綴られます。例えば10人のグループがあるとして、Aさんの発言に対してBさん、Cさん、Dさんとリプライが続くと、Aさんの発言はタイムラインの彼方に押しやられてしまい、いちいちさかのぼらないとどんな内容だったのかわからなくなってしまう」(江口氏)

 LINEをお使いの方なら納得できる現象だろう。友人との他愛ない会話ならそれでもいい。しかしこれが「市長からの伝令」だったらどうだろう。

 市長「市庁舎に集まってください」
 A「了解」
 B「承知いたしました」
 C「了解」

 このようなやり取りが続けば、最初の「市庁舎に集まってください」が探せなくなってしまう。

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