心配なのはコンクリートの経年変化

「やっぱりこれって、常識を覆した施設ですよ。これまでの治水の常識は、人工の放水路か、高い堤防。でもやっぱり毎年どこかで水に浸かる地域がでる。地上でできることはやり尽くしているわけですよ。だったら地下にダムを造りましょうって、たぶん最初は『馬鹿なことを言うな』みたいな反応だったと思いますよ」(渡辺氏)

「最初に考えた人が誰なのかわかりませんが、あるいはそういう反応だったかもしれませんね」(長氏)

立杭をのぞき込む。エレベーターはなく点検の際などは階段を使う

「これは国土交通省の河川局にダムの発想を持った人がいたっていうことだと思います。温暖化などの影響もあるのかもしれませんが、近年の大雨は過去の想定をことごとく塗り替えていますよね。もう河川の改修では追いつかなくなった。そこで発想を転換し、地下にダムという禁じ手を使った」(渡辺氏)

「確かに緊急かつ抜本的に大雨の被害を軽減する方策が必要だった。そういう背景があってこのような大胆な施設が完成したのだと思います」(長氏)

「見せていただいて思ったのは、コンクリートの経年変化ですね。ほぼすべてがコンクリート構造物ですから、いずれ寿命が来ます。常にウエットな環境であるというのもコンクリートにとっては過酷ですよ」(渡辺氏)

「なるべく長く使うために常に点検、修復など維持管理をきっちりやっています。なにしろ市民生活に直結する施設ですから」(長氏)

 取材を終えた渡辺氏は立坑を覗きながらこんなことをつぶやいた。

「都市部の下水処理能力って、降雨量でいうと毎時50ミリの想定です。それ以上降るとあふれちゃう。そうなってくると、今後はやっぱり首都圏外郭放水路のような、地下のダムがもっと必要になってくると思いますね。建設費は多くて数千億円ですからね。そしてなにより今後も恒常的に発生するであろう現実的な異常気象への対応策の切り札になる」