巨大なコンクリート柱が立ち並び、なにやら荘厳な雰囲気を漂わせる巨大な地下水槽。今回、取材に訪れている治水施設・首都圏外郭放水路の調圧水槽だ。地下神殿のような趣きのおかげで、テレビ番組やミュージックビデオなどのロケ地としても使われる。しかし、首都圏外郭放水路の施設はこれだけではない。その全貌に“防災の鬼”渡辺実氏が迫る。

 前編に続き、国土交通省 首都圏外郭放水路管理支所 管理第一係長の長康行氏にご案内いただく。

 いよいよ施設に潜入だ。まずは河川からの水を取り込むための巨大水瓶「調圧水槽」だ。ここは“地下神殿”の異名を持つ。管理支所の事務所からは地上を歩いて移動。眼前に外郭放水路グランドが広がる。サッカーやゲートボール場として使われる広場の隅に、うっかりすると見過ごしてしまいそうな小さな建物があった。コンクリートで囲われた地下鉄の入り口のような外観だ。

「ここが調圧水槽の入り口です」と長氏はドアに鍵を差し込んだ。

 地下に続く入り口に一歩足を踏み入れると、そこからは別世界だ。ひんやりした空気が体を取り巻く。

 長氏を先頭に、階段を降りる。深く下るにつれ、スチール製の手すりや階段がジンワリ湿ってくる。

「これは結露ですね。湿度が高いのでこうなります」(長氏)

 116段の階段を降りきる。深く下った分、見上げる光景は壮観だ。地下神殿と呼ばれる理由がよく分かる。天井に向かって伸びるコンクリート柱は幅2メートル、奥行き7メートルの楕円形。

地下神殿の異名を持つ調圧水槽。真ん中に小さく“防災の鬼”渡辺実氏

「これが何本あるんですか」(渡辺氏)

「全部で59本です。一本の重さは500トンあります」(長氏)

「なるほど、そのくらいの重さがないと浮いてきちゃうわけだ」(渡辺氏)

 地面の下は思ったより不安定だ。常に地下水が湧いており、地下に埋めたものに圧力がかかる。そのために浮き上がろうとする力が働くのだ。巨大貯水槽も放っておけば浮いてしまう。これを防ぐために500トンのコンクリート柱で抑え込む必要があるのだ。

「揚圧力という力のために地下構造物が浮こうとするわけです。東京駅とか上野駅の地下部分は浮かないように100トンくらいのアンカー杭を何本も地盤に打ち込んでいますね」(渡辺氏)