「賠償金が終われば廃業すればいい」が問題

 2015年4月以降の調査で、基準値を超える魚は確認されていないことから、2017年3月の地元漁協の組合長会議において、出荷制限がかかる一部の魚種以外は安全であることが確認された。

 しかし、全国的には「福島の魚は危ない」と思い込んでいる消費者は少なくない。

いわき海洋調べ隊 うみラボ 共同代表の小松理虔氏

「福島県以外では、漁業従事者でさえ、福島での出来事を他人事だと思っています。だって福島の魚が流通しなくても全国のユーザーは困らないでしょ。でも、問題はそういうことではない」(小松氏)

「福島で起こっていることは全国どの港でも起こる可能性があります。原発がなくたって漁ができなくなる事故はいくらでも起こりうるし、産業構造として日本の漁業の将来は厳しいものがある。そうした場合、どう行動すれば地域の漁業を維持継続していくことができるのか、福島で起きた出来事、そしてその後に起きている出来事にもっと目を向けるべきですね」(渡辺氏)

 ここで思い切ったように小松氏が口を開いた。

「福島県では、震災前から廃業寸前の漁師さんって実はけっこういたんです。高齢で跡取りもいない。船も古くなった。そこに3・11が襲った。原発事故のおかげで漁ができなくなった。かわりに『賠償金』が入ってくる。それがあるせいで『もう一度海へ出よう』という気が失せた漁師もいた」(小松氏)

「その構図は海だけじゃなくて畑や田んぼの農業にも林業にもありますね。ただ、福島の賠償金は2020年のオリンピックを目安にカットされるのではないか、と危惧する意見もある。安倍首相は東京オリンピックを誘致するときに、完全に『アンダーコントロール』だと言ってしまった。それなのに賠償金が発生するような『危険な場所』がいつまでも存在するとまずいわけです。だから全世界からお客さんがくる2020年がひとつの目安になる可能性がある。そうなれば福島の漁師さんも困るでしょ」(渡辺氏)

「もちろん困る人もたくさんいます。だけど『賠償金が終われば廃業すればいい』と考えている人も少なくないんです。これが福島の漁業の再生を遅らせているという側面もある」(小松氏)

「なるほど、これは全国的な問題ですね。福島は漁業再生のお手本になるべき」(渡辺氏)

「そうです、そしてお手本になることができる可能性もある。私達がやっている『うみラボ』もそのひとつ。民間の我々が調査することでより多くのデータを提供することにつながるし、事業者の意識を高めることにもなります」(小松氏)