まったくもって魚は安全

 と言われても素人にはピンとこない。渡辺氏の解説を聞こう。

「厚労省などの説明では一度に被曝する線量が100ミリシーベルト以下であれば、ガンで亡くなるなどの放射線とリスクの関係は報告されていません。だから100ミリシーベルトを一応の基準にしています」(渡辺氏)

放射性物質計測機器 赤い蓋を開けてこの中に魚のすり身を入れる

「成人男性の場合、8万ベクレルの線量を一度に体内に入れると、内部被曝が1ミリシーベルトになると言われています。つまり仮に1キログラムあたり100ベクレルの魚がいたとして……そんなの我々が捕まえることができる場所にはいませんけど、もしそういう魚がいたとして、この魚の刺し身80トンを一気に食べたら100ミリシーベルトの内部被曝です」(富原氏)

 つまり今回検査したヒラメが1キログラムあたり6.30ベクレルだから、その130万倍弱を一気に食べると100ミリシーベルトの内部被曝となる計算だ。福島の海で採れる今の魚は、まったくもって安全なのである。

「このサイズのヒラメは生後9年から10年といったところでしょう。つまり震災の前に生まれている。震災直後の2011年4月1日から6日にかけてすごい量の汚染水が福島の海に流されました。その水に晒された可能性があるので、1キログラムあたり6.30ベクレルという数字が出ていますが、例えば2~3歳の魚だったら、つまり震災後年月が経過してから生まれた魚であればもっともっと低い数字になるでしょう」(富原氏)

 人間は、自然にある放射線から「呼吸により1.2ミリシーベルト」「食物から0.3ミリシーベルト」を体内に取り込んでいる。そうしたところからも、6.30ベクレルがいかに微量であるかがわかるだろう。

 「調べラボ」終了後、『いわき海洋調べ隊』の共同代表をつとめる小松理虔(りけん)氏に話を聞くことができた。

 小松氏の言葉からは原発事故以降の危機管理についての、行政のいびつな構造が見えてくる。キーワードは「日本の漁業の現状」「福島の漁業従事者への賠償」の2つだ。

「まず言いたいのは、今福島で起こっていることは日本のどの地域に起こってもおかしくないってことです」(小松氏)

 東日本大震災による津波などの影響で、福島第一、第二原子力発電所が破壊された。大量の汚染水が福島の海に垂れ流されたわけだが、その後の経緯について、当事地域に暮らす者以外、意識されることはほとんどない。つまり「よくわからない」のが現実だ。

 福島県では2013年6月に地元の漁師による試験操業が開始された。近海で採れた魚介類200程度を毎週検査し、安全が確認された魚種を随時、選定している。