民間だけの力ではどうにもならない

 災害が重なることで、清水氏は次のような危惧を感じるという。

「熊本地震がもはや風化し始めているんです。続けて災害が起きたものだから、そっちに目が行ってしまう。これって何なんでしょうね。次が起きると前の災害を忘れ。また一からのスタートになってしまう。多くの救助態勢がそうです。阪神・淡路大震災のときの応急仮設住宅を見て『ひどいな』と思いましたが、東日本のときも同じように感じました。繰り返しです」(清水氏)

「おっしゃる意味、すごくわかります。トレーラーハウスの被災地活用にしても当初は注目されましたが、このまま放っておけばやはり風化してしまいます。ある意味非常に不安定です。

 しかし、継続していくにはコストの問題が重要だと思いますが、今回の熊本を体験されて、いかがですか? ソーシャル・ビジネスとして成り立つものでしょうか?」(渡辺氏)

「社会の様々な問題をビジネスの手法で解決する、というのがソーシャル・ビジネスの根本だと思っているのですが、民間だけの力ではやはりどうにもなりません。我々が何をやっても、公の立場の方々が『あっそう、君らが勝手にやったんだから、こっち(国や自治体)は知らないよ』っていうのでは次が続きません」(清水氏)

「清水さんは今回熊本でトレーラーハウスの素晴らしさを世の中に知らしめてしまった。そういう意味では今後この運動の火を消さないために、ある意味で責任を負ったということになりますよね(笑)」(渡辺氏)

「熊本での活動が認められて、その他の自治体さんからもオファーがぼちぼちきはじめています。例えば山口県の周防大島町でトレーラーハウスを何台か備蓄していこうという話がほぼ決まっています。災害時に活用することを前提に日ごろはスポーツ合宿などに使おうという計画です。こうした活動はこれからも粛々と続けていくつもりです」(清水氏)

「あと、これは泥臭い話ですけど、応急仮設住宅が持っている地元産業の保護という側面も見逃してはいけませんね。つまり、何かしら大きな災害が起こって応急仮設住宅が必要になったとき、実際の設置は地元の施工業者が中心になって動きます。これが打撃を受けた被災地への経済的な救済効果になるという面もある。ところがトレーラーハウスの場合は完成品をドンと持っていくわけですから、地元の業者にとっては旨みがない」(渡辺氏)

「そこも大きな問題です。ただ解決策がないわけではありません。トレーラーハウスは特殊な建造物ではありますが、一般のハウスメーカーが造れないものではありません。実際レスキューRVパークにあるトレーラーハウスはすべて国産です。だから各地でトレーラーハウスを導入する際に、完成品を買うのじゃなくて、地元の業者さんが地元の材料を使って作って搬入してもらう。そのためのバックアップは僕らがお手伝いする。そういうやり方も考えています」(清水氏)

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