トレーラーハウス設置はプロの技
我らが“防災の鬼”渡辺実氏も、清水氏の取り組みは大いに評価している。
「いろんなところで何度も話してきたけど、アメリカなどは膨大な数のトレーラーハウスを備蓄していて、ハリケーンなどの災害が起こったときには、とにかくこれを現地に送り込むんです。お陰で救われた命は数知れない。そうした発想を日本でも展開すべきです。国の防災関係者にずっと以前からそうした話をしているのですが、なかなか動いてくれなかった。あきらめかけていたときに、今回の熊本地震で清水さんたちが初めて国を動かしたわけです。
いま熊本から帰還したトレーラーハウスを見て、これを1回限りのイベントとして終わらせないために、やるべきことを考えていかなければなりません」

益城町から帰還したトレーラーハウスは、森と湖の楽園の駐車場に仮置きされ、そこから隣接するレスキューRVパークに移される。
移動の様子を見学させてもらった。トレーラーハウスはフォークリフトで押し引きしながら運ぶ。駐車場から公道に出て、道幅ギリギリのハウスを移動させる。押して運ぶときは、フォークリフトの運転席から前方を見渡すことができない。先導する者の声に従い、ステアリングを操る。

レスキューRVパークでは、トレーラーハウス1台につき、1台ずつのウッドデッキが用意されている。指定の場所まで運べば、次の作業だ。
自由に移動可能なトレーラーハウスだが、ただ置けばいいというものではない。「きちんと水平を出さなければいけません。傾いた場所に長く生活していると三半規管をやられていろいろな不調の原因になりますから」(作業員)。

頑丈な固定ジャッキをトレーラーハウスのシャーシに差し込む。ハウスの四方にスケールを固定し、三脚に乗せた“オートレベル”と呼ばれる計測器を使いミリ単位で水平を出していく。作業員は「室内でビリヤードで遊べるくらい水平を出しますよ」と笑う。

一通りの設置作業が終われば、網戸やカーテンを取り付け、移動中、雨水などの侵入を防ぐために貼られていた養生テープをはぐ。
「僕は実際、4年間トレーラーハウスに住んでいます。本格的な家として使う場合は、周りに側溝を掘って水はけなどをケアし、水洗トイレに対応するように水道や下水を手当てします。もちろん電気やガスも引きます。被災地で地域のライフラインが途絶している時期は、自家発電機、プロパンガス、浄化槽で完全自立した“仮の住まい”として使用することも可能です」(清水氏)
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