2016年11月、“防災の鬼”渡辺実氏のプロデュースで「トレーラーハウス被災地活用シンポジウム2016」が山梨県・河口湖畔で開催された(「提言!災害関連死削減にトレーラーハウス活用を」参照)。あれから2年、当時はまだ高かったいくつかのハードルを越え、西日本豪雨の被災地・倉敷市ではトレーラーハウスが応急仮設住宅として使われることになった。これまでの経緯と、トレーラーハウスのさらなる飛躍に渡辺氏が迫る。

「岡山県倉敷市の被災地で、トレーラーハウスが仮設住宅に」
9月8日、そんなニュースが流れた。“防災の鬼”渡辺実氏は「歴史的な出来事」と評価する。
「国内でも様々な被災地でトレーラーハウスは活躍してきました。ただ、これまでは個人や商店会などが独自に導入するケースがほとんどでした。熊本地震では30台のトレーラーハウスが体の不自由な方やご高齢の方などを受け入れる『福祉避難所』として災害救助法に基づく公的な避難所として3カ月間、被災地で活用されました。
そして今回は、避難所ではなく、災害救助法による原則2年間の『応急仮設住宅』として公的に運用されることとなった。西日本豪雨の被災地、倉敷市が初めてのケースとなるのです」(渡辺氏)
この取り組みが今後も広く運用されることになれば、被災者支援の可能性が飛躍的に拡大する。渡辺氏は期待に胸を膨らませている。
近年、キャンピングカーやトレーラーハウスなどレクリエーショナル・ビークル(以下RV)の需要が国内でも高まっている。もともとはアウトドアレジャーを楽しむための車両だが、RV先進国のアメリカではトレーラーハウスの被災地活用が当たり前の被災地支援策になっている。
「1992年のハリケーン・アンドリューの被災地を視察に行ったときに見た光景が今でも忘れられません。家を失った被災者たちの受け入れ施設として巨大なトレーラーハウス・タウンが突如として出現する。そのスピードとダイナミックな規模の大きさに驚きました」(渡辺氏)
渡辺氏が見たのは『アメリカ連邦緊急事態管理庁(以下FEMA)』が実施するトレーラーハウスの被災地活用プロジェクトだ。
トレーラーハウスの被災地活用を促進する日本RV輸入協会の会長であり、トレーラーハウスの製造販売を行うカンバーランドジャパンの社長でもある原田英世氏がこう説明する。
「FEMAは被災地で利用できるトレーラーハウスの仕様を作り、備蓄と運搬を取り仕切ります。04年のハリケーン・チャーリーでは1万7000台以上のトレーラーハウスが活用されました。翌年のハリケーン・カトリーナとハリケーン・リタでは14万台を超えるトレーラーハウスが被災者たちの仮住まいとして活躍しました」
全米各地に備蓄されたトレーラーハウスを有事の際に被災地に運ぶ。
「トレーラーハウスの大行列がハイウェイを走る。アムトラック鉄道で何十両ものトレーラーハウスが運搬車両に乗せられて被災地へ向かう。その姿は圧巻で、誰が見てもわかる。『待ってろよ、いま被災地支援へ向かっているぞ』と被災者へ勇気と希望を与えています」(渡辺氏)
原田氏と渡辺氏はトレーラーハウス被災地活用について長年協力し合う間柄だ。二人が口を揃えるのは「日本は十年一日のごとく変わらない被災地での仮設住宅事情」だ。
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