2013年に組織された警視庁の『特殊救助隊』、通称SRT(Special Rescue Team)。総勢30人程の精鋭部隊だ。部隊のユニフォームは緑とオレンジのツートンカラー。腕にはトレードマークの黒豹がデザインされたエンブレム。ジャングルを駆ける黒豹のようにすばやくしなやかに救助活動を行う。黒豹軍団の本部基地に“防災の鬼”渡辺実氏が潜入したその後編(前編はこちら)。

今回、取材に対応いただいたのは、齊藤昌巳警部 警視庁警備部災害対策課 特殊救助隊指導班長と髙橋弘樹巡査長 警視庁警備部災害対策課 特殊救助隊実施班の二人。彼らを含むSRTの精鋭たちは、『平成30年7月豪雨』で被災した広島県に投入された。長年災害現場の取材を続けている渡辺氏はこう言う。
「今回のような災害もそうですが、現場には警察はもとより、消防や自衛隊など様々な組織の部隊が投入されます。それら全てが一つの命令系統下で動いているのなら問題はないのですが、そうはいかない。警察は警察、消防は消防、それぞれの命令系統が存在します。これっていいかげん整理されてもいいと思います」(渡辺氏)
東日本大震災の被災地でも同じことが指摘された。例えば、いったん自衛隊が入って被災者を救助しながら瓦礫を撤去した場所に、後から別の組織の部隊が入り、撤去した瓦礫を再び捜索するなどの『無駄な行為』が各地で発生したのだ。

「命令系統がひとつに統合されていたらそうした無駄もなくなると思います」(渡辺氏)
「実は関東では徐々にではありますが、そうした懸念を払拭するための取り組みが行われ始めています。関東近県で組織する『関東管区警察局』の中に『指揮支援チーム』というものを立ち上げました。最初にこれが可動したのは『平成27年9月関東・東北豪雨』です」(齊藤氏)
平成27年の東北豪雨では、鬼怒川の決壊が大きな被害をもたらした。こうした災害が発生したとき、被災県の警察や消防などの各組織は、様々な対応で忙殺される。おかげでオペレーションを整理し、的確に命令を下すことが難しい場合もある。
「茨城県常総地区の被災現場では警察の『指揮支援チーム』が現場の災害本部に入り込み、各組織の情報を精査して命令系統を整理しました」(齊藤氏)
水害の場合、ヘリコプターでの救助が力を発揮する。地上部隊とヘリコプターが協力しあいながら救助活動が行われるのだが、情報が整理されていないと、空には消防のヘリ、その真下は警察の部隊といったちぐはぐなことが起こる。関東管区警察局の『指揮支援チーム』が情報を整理することで、そうした不具合が劇的に減ったという。
Powered by リゾーム?