地震から2カ月経った益城町
地震から2カ月経った益城町

 熊本地震でもっとも大きな被害を受けた熊本県上益城郡益城町。熊本県内の全壊・半壊家屋は6月中旬の段階で3万500棟。そのうち約15%の4500棟が益城町に集中している。死者20人も突出して多い。

 4月からこれまで幾度も現地を訪れている“防災の鬼”渡辺実氏はこう言う。「地震から2カ月経った今も町内を歩くと地震の傷跡は全く癒えていない。益城町はあの日から時間が止まっている。完全復帰まではまだ長い年月が掛かりそうだ」。

 そんな益城町が大きな決断をした。被災者の福祉避難所としてトレーラーハウスの利用を公式に認めたのだ。「自治体が公式にトレーラーハウスの利用に乗り出したのは日本初です」と渡辺氏も頬をゆるませる。その現場を緊急リポートした。

 今回の地震で全国的に注目を集めることになった熊本県益城郡益城町。町に古くから暮らす50歳代の男性はこう嘆く。

「こんな形で有名になってしまって正直戸惑っていますよ。地震前までは県外の人は“ましき”の読み方さえ知らない人も多かったくらいだ。注目されて復興が早まるのなら大歓迎だが、そんな簡単なものでもないような気がする」

 震災後は毎日のように新聞やテレビのニュースに登場し、今や益城町のことを多くの日本人が知るようになった。

 ところがこの地で問題になっている被災住民の悲惨な生活は、時間の経過とともにメディアからどんどん消えいっている。想像以上のスピードで風化しているのだ。実際は、震災から2カ月以上が経過した今も、6000人以上の住民が避難生活を余儀なくされており、車内泊を続ける人も多数にのぼる。エコノミー症候群や孤立からくる心身症など、二次被害、三次被害への手立ては待ったなしの状況だ。

「そうした状況下にある益城町が英断を下したんですよ。福祉避難所として、トレーラーハウスの導入を公式に認めたのです」(渡辺氏)

 福祉避難所とは妊産婦や介護の必要な高齢者、障害者など一般の避難所では生活に支障が出てしまう方々を対象にしたもの。今回、益城町はこの福祉避難所にトレーラーハウスを採用した。以前から被災地でのトレーラーハウスの利用を提唱してきた渡辺実も喜びを隠せない。

「知らせを聞いたときは思わず関係各所に連絡をして“ついにやったな”とたたえました」(渡辺氏)

 タレントの清水国明氏などが運営する「レスキューRV(レクリエーショナル・ビークル)パーク」や日本トレーラーハウス協会といった団体が中心となり、5月の下旬から益城町内にあるグランメッセ熊本の駐車場に次々とトレーラーハウスが運び込まれた(「緊急支援にトレーラーハウスが被災地熊本へ!」、「トレーラーハウスの活用で避難生活は激変する!」参照)。

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