防災を最小単位まで落とし込む

「防災って本当にイメージがわかなくって。ぱっと思いつくのが避難訓練、くらいです。それだって楽しくないから多くの人たちはなかなか参加してくれない。災害を防ぐ防災、そして災害を減らす減災。そうしたことをもう少し噛みくだくとどうなるのか、って思ったときに、例えば普段からヒールを履くんじゃなくて、これをスニーカーにするだけ。たったそれだけでも十分に“防災する”ことになる。そうしたことを伝えていきたいです」(田中氏)

 なるほど、“防災する”と“防災を学ぶ”は似ていて非なるものであるようだ。

「地震がきたら机の下に隠れる。でもそれだけじゃなくて、目の前の机が隠れるに足るほどの強度があるか、その部分を“考える”のも防災することにつながります。そうしたことを広めていくのが防災ガールの役目だと思っています。自分たちの生活の中でやりやすい防災というものを“最小単位”まで落とし込んで、これをみんなでやっていこうということなんです」(田中氏)

「そこに女性(ガール)というくくりをつけたわけですけど。その狙いはどういったところにあるんですか?」(渡辺氏)

「最終的には、私達と同じような人たちの意識改革をしたいというところがあったので、コアターゲットは“20代女子”にしようというのは最初からありました。でもこれはゆるやかな枠組みですから、同年代の男性もたくさんいます」(田中氏)

「僕が『彼女を守る51の方法~都会で地震が起こった日』(マイクロマガジン社)という本を作ったとき、女子大の図書室とか女子大の中にある本屋さんだけをターゲットにして販売しよう、という戦略を考えました。そこだけに限定で売ろうってね。でも残念ならが、出版社から『それは無理です』ってことになって普通の流通にのせて書店・通販売りをしたんだけど(笑)。

 何が言いたいのかといえば、女の子が防災について知れば、自分の周りにいる男性の防災力を評価するようになるんじゃないか。この彼はいざというとき、私を守ってくれるのか、頼れるのかしら、ってね。彼女に“防災に疎い男子はダサい”って評価を下されれば彼氏は頑張るでしょ(笑)。だからつられて男子も防災を身につけようとするだろう。そういう思惑があったんだよね」(渡辺氏)

「いいですね。私もその考え方に少し近いかもしれません。あと、防災もおしゃれであってほしい。そんな女の子らしい意識がいつも根底にあります。だからバッグの中に収まる防災ポーチをプロデュースしたこともありました。緊急避難用のリュックもいいんですけど、防災のためのリュックを背負っている姿を大好きな彼氏に見られたくないって女子は必ずいます。そうした声を参考にして作ったのが化粧ポーチ感覚の『BOSAI PORCH』です」(田中氏)

ガールらしく、髪の毛を束ねるためのゴムやヘアピンも入っている。価格は2700円。2014年3月から1年間で1000セットを完売した
ガールらしく、髪の毛を束ねるためのゴムやヘアピンも入っている。価格は2700円。2014年3月から1年間で1000セットを完売した

「やっぱり同じことを考えてるんだなぁ(笑)。僕もこれまでいろいろな防災グッズをつくってきました。男性サラリーマン向けのバッグインバッグ式のグッズとか、女性のポーチ型も作りました。まさに“防災する”という意識の普及ですね」(渡辺氏)

 取材の最後に“防災の鬼”渡辺実氏から一言アドバイス。

「防災ガールを名乗るのであれば、今後は例えば“心肺蘇生”や“応急手当”などの救命救急技術を身につけるといったスペック面を充実させるといいですよね。そうした人が全国のいたるところにいるというだけでかなり心強い。有事の際には防災ガールのTシャツをサッと着る。そのTシャツを着ている人たちはすべて心肺蘇生などの技術がある。頼りになるし、なによりかっこいいですよ!」