避難所となった熊本市役所

 朝になったがホテルはまだ安全確認ができないので立ち入り禁止の状態。それでもKKTへ向かわなければならないから着替えだけは済ませたい。ホテル側に事情を説明し、渡辺はなんとか着替えだけはすませ、KKTへ電話して自分の安否を知らせタクシーを依頼して、再びKKTの本社に向かった。

“防災文化”はどう育てるのか

「その後の気象庁の会見で、14日の揺れではなく16日の午前1時25分に起こった地震が本震であるという発表がなされた。そこからKKTでは午前と午後に特番を組むことになり、この日はその構成とか指示出しのために一日中局詰めになってしまいましたね」

 翌日17日も同じように朝から特番のアドバイスで1日があっという間に過ぎたという。

「そして18日にはいったん東京に戻ってきました。ところが本震の揺れで熊本空港の管制システムとターミナルビルが被害を受け、飛行機の発着が止まってしまった。結局タクシーで福岡空港まで行き、そこから羽田に帰ってきたというわけです」

 熊本県、大分県などでは余震は続いている。まだまだ予断を許さない状況だ。

崩れ落ちた熊本城の石垣

「5年前の東日本大震災の経験から、もう二度と想定外はないなんていう人もいるけど、やっぱり想定外のことは起こるわけです。今回だって余震の後に本震がくる、震度7の地震が二度も連続して起きる、余震域が広域に移動する――という想定外のことが起きてしまった。南海トラフがどうだとか、中央構造線がなんだとか、そうした地震発生メカニズムの難しい話も大切だけど、現地の被災者にとってはどうでもいいことだったりもするわけです。トイレはどうすればいいのか、エコノミークラス症候群を防ぐには何を心がければいいのか、お年寄りや子供たちの不安を取り除くにはどんな行動をすればいいのか等々、明日を生きていくための情報、そうした情報や知識・知恵を積み重ねることしか“防災という文化”を育てることはできないのです。地震が襲ってくる前に防災の文化を創り上げることが今、被災地だけではなく全国に求められているのです」

 この取材中にも“防災の鬼”渡辺実のスマホには、報道各社からの取材電話やメールが着信している。被災が長期化すれば、“防災の鬼”の役割も長期にわたって必要とされることになる。