やっと部屋にたどり着いて、タオルにペットボトルの水を含ませ、体を拭ってひとごこちつき、ベッドに入ったのが深夜の1時過ぎ。

 ウトウトしかけた1時25分。襲ってきたのが最大震度7、M7.3の本震だった。

「体がベッドの上で跳ねたね。冷蔵庫は前に飛び出す。壁の時計は飛んで来る。スタンドライトは倒れる。起き上がって部屋を見たらベッドそのものが横に数十センチほど動いていた。22年前にロサンゼルス地震の取材で大きな直下余震を経験したことがあるけど、国内での直下地震体感はそれ以来だった」

 防災の鬼もこれには驚いたという。すぐに起き上がって出入り口のドアの鍵チェックし、いつでも開けられる状態を確保した。

「ホテルの扉は金属製ですから、建物が歪むと開閉できなくなる可能性がある。まずはドアを開けることがが定石です」

 すると、すぐに館内放送が流れた。

「安全確保のためにまずは外に出ろというわけです。これは正しい判断ですね。パジャマの上にコートを羽織って靴を履き、備え付けの懐中電灯を持って非常階段を使ってホテルの1階に行った。そしてスタッフの誘導で近くの公園に避難することになりました。1階に降りた宿泊者の中に多くの外国人もいました。またテレビのクルーも何人かいて、すぐにライトを付けて被害の中継リポートが始まっていました」

取材クルーに灯りの確保を依頼

 “防災の鬼”渡辺実は自分が防災・危機管理ジャーナリストであることを説明し、テレビクルーたちに「中継車両のヘッドライトや撮影のためのバッテリーライトをなるべく照らしっぱなしにしてくれ」と依頼した。

「このホテル周辺には電気は来ているのですが、熊本市内の夜は街灯も少なく暗い。もし上からモノが落ちてきたら危ない。こんな時の灯りは生命線でもあるんです。幸いテレビクルー達も私の話を理解してくれて、依頼通りに辺りを照らし続けてくれました」

ホテル近くの公園の深夜2時過ぎの様子。朝までこの状態が続く

「ホテルは安全の確認が取れないから戻れない。ホテルのそばにある公園で夜明けまで過ごすわけですが、みんな着の身着のままで出てきている。夜は寒いからホテルのスタッフが毛布やバスタオルを提供してくれて、これでなんとかしのぐことができました」