ところが道はどこも大渋滞。被災地が近づくほど、車の流れは滞るようになった。

「我々のような報道クルー。救急車、消防車、パトカーなどの緊急自動車。さらにダークグリーンの自衛隊車両。もちろん避難しようとする地元の方々の車も多い。これらが一緒くたになって大渋滞を起こしているわけです。結局夕方のニュースには間に合いませんでした」

被災地のいたるところにこうした倒壊家屋がある

 移動の途中も、“防災の鬼”渡辺実は自分の役目を忘れない。被害が大きかった益城町のなかを車で移動中に被害状況を確認していった。

「常々言っているんですけど、“防災は文化”です。九州の人たちは地震慣れしていません。九州の災害といえば雨と風。だから防災文化もそっちが中心なんです。テレビなどで現場の様子が流れていますが、崩壊しているものの多くが立派な屋根と瓦を持ち、土で固めた壁の古い家屋ですね。大きな屋根と重い瓦というのは風の災害に対しては有効なのですが、地震には弱い。熊本城の中にある熊本神社などはその典型です。今回はこうした九州の“防災文化”が仇となって被害を広げたという側面があります」

番組の進め方にモノ申す

 15日、夕方のニュースのための中継ポイントに間に合わなかった“防災の鬼”渡辺実は、その足でKKTの本社に向かった。

渡辺氏がサポートに入った熊本県民テレビ

 そこでクルーたちに様々なアドバイスを出していった。

「防災・危機管理ジャーナリストとしての僕の役割は、番組に出演することもそうだけど、それ以上に被災ローカル局の被災者との向き合い方、被災者へ向けてはどのような情報が重要になるのか、被災者のための放送に徹することの重要性など、という災害報道の指針を示すことなんです。東日本大震災の時も同じでしたが、最近は特にそうしたところに力を入れるようにしています」

 地元の放送局は日ごろ、地元に密着した情報を提供している。これら地元局のほとんどは在京キー局の系列局としての役割をも同時に担っている。渡辺が関わったKKTは日本テレビのNNN系列である。