人が住んでいないと家は死ぬ
「当然ですよね。ただ地元でも認知され始めていた屋号ですから、これをゼロにしてしまうのはどうしても忍びなかったんです。震災前はそれこそ人生をかけてこのホテルを成功させようとしていましたからね」(遠藤氏)
救援物資として送られてくる食品は多くが保存食の類だ。楽しんで食べるものではない。被災地に物資を配布する活動を続ける遠藤氏のもとには「観陽亭の支配人なんだから、なんか美味しいものを持ってきてよ」といった声が集まるようになっていた。
そうしたなか、観陽亭の屋号を残してお弁当屋をやろうというアイデアが生まれたのは自然な流れだった。

“ぶら防”一行は、かつての観陽亭があった場所に行ってみた。すでに建物はなく、当時太平洋を背景にして結婚式などで使われた石造りのチャペルが残っているだけだ。
「ここも現在は避難指示が解除になっているのですが、住める状態ではない。例えばこの隣にあるお宅は震災から6年間空き家ですが、中は悲惨な状態です。人が住み続けていないと家そのものも死んでしまうのです」(遠藤氏)
「避難指示が解除され、住んでもいいということになっても、この家に住めますか?という話だよね」(渡辺氏)
こうした原発事故被災地の現実を、国はどこまで把握しているのか甚だ疑問だ。復興のトップに立つ今村雅弘復興大臣は4月4日の閣議後記者会見で、「自主避難者が帰れないのは自己責任と思うか?」との質問に「基本的にはそうだ。国はできるだけのことはやった」と答えた。
「この3月末と4月1日に強制的に避難をさせた避難指示区域が解除になった。しかし解除の根拠はよくわからない。東京オリンピックの誘致活動で安倍晋三総理は“アンダーコントロール”という言葉をつかった。福島の事故は完全にコントロールできているという意味だよね。ところが本当は全然できていない。国民もそのことに気付いているのに目を背けている状態なんですよ。この今村復興大臣の発言は、あり得ない! 6年経っても毎日苦しんでいる被災者の心をどれだけ傷つけたか。どうやら今村大臣は辞任の意を固めたみたいだけど、怒りを覚える」(渡辺氏)
Powered by リゾーム?