いくら巨大施設が完成しても…

 また同センターは実験だけでなく、開発の現場でもある。

「廃炉作業には多くのロボットが投入されます。当センターをその開発の現場として使っていただくのも我々の仕事なのです。現在のロボット開発にモーションキャプチャーの技術は欠かせません。そうした設備も整っていますので、まずはお問い合わせいただきたいと思っています」(小島氏)

縦横数メートルの巨大なモーションキャプチャー施設

 例えば人間の各関節などにマーカーを装着し、この中で運動する。これを複数のカメラが解析し、体の動きをミリ単位で記録できるのだ。

「CGを使うゲームの世界でもモーションキャプチャーの技術は使われる。ただ、この規模の施設は見たことがありません。これなら複数の人間の動きを同時にキャプチャ―できる」と渡辺氏も舌を巻く。

 視察を終えた渡辺氏は巨大な施設を振り返って、空を仰ぎつぶやいた。

「福島県浜通り地区のイノベーション・コースト構想は2020年を1つのめどとして計画が進行している。この開発センターは構想の重要な一部。今後もさらに多くの施設が稼働を始める予定だ。ただ、こうした構想が動き出したことと、その地域に住む人達の生き続ける生活の質の改善とは必ずしも一致しないというのが現実。いくら巨大施設が完成してもこれを使用するのは原子力の専門家や企業であり、地元雇用が大きく発生することにはなっていない。つまり、被災者の幸せが確保できるわけではないということ。ここから目を背けてはならない!」

 “防災の鬼”渡辺氏が語る「被災地で生き続ける人達の生活」。

 その現実を見据えるため、次回は避難指示解除になっても、この6年間、なにも変わらない帰還困難区域の今に深く切り込む。