雇用の拡大にも貢献
「当実験センターは、福島県のイノベーション・コースト構想の一翼を担う施設です。イノベーション・コースト構想とは原発事故によって失われた福島県の浜通り地域の産業基盤の再構築を目指したものです」(小島氏)
楢葉遠隔技術開発センターなどのロボット技術の研究開発拠点をはじめ、イノベーション・コースト構想は、再生可能エネルギーや次世代エネルギー技術の積極導入や先端技術を活用した農林水産業の再生、また原発事故後の未来を担う人材の育成などを視野に入れた国家プロジェクトである。
「ちなみにこの実験センターがこの土地にできることで、例えば雇用が増えたりしているのですか」(渡辺氏)
「現在当施設の職員は60人ほどです。守衛関連のスタッフや事務方など、少しずつではありますが、地元採用を増やしている状態です。ただ、こちらの施設そのものは工場などと違って巨大な雇用をこれ自体が生むのではなく、技術開発などのために地元の企業様などに施設の設備を使っていただき、間接的に雇用増大につながればと考えています」(小島氏)
「なるほど、それも大切なことですね。ちなみにこの1年の施設利用の実績は?」(渡辺氏)
「NHK主催の廃炉ロボコンなどに使用されたのを含め40件ほどです。センター側の広報下手ということもあってこの程度の数字になっていますが、試験棟には巨大なモーションキャプチャー施設などもありますので、今後はさらに多くの企業・団体にご利用いただきたいと考えております。」(小島氏)
モーションキャプチャーとは、人間などの動きを測定しコンピューターに取り込む技術だ。人の動きを読み取る場合は各関節にマーカーをとりつけ、この動きを数値として読み込むことで全体の動きを再現する。格闘ゲームなどに登場するキャラクターの動きはこの技術によって作られている。
「そうですね、せっかく大金をかけて作ったのですから、メディアにどんどん露出して名前を広めてくださいよ。例えば私はソニーのプレイステーション4で防災をテーマにした『絶対絶命都市4Plus』というゲームを現在監修しているのですが、モーションキャプチャーの技術は3DやVRが進んでいる今のゲーム開発には欠かせないものです。そうした民間利用でも可能ですか?」(渡辺氏)
「当施設は廃炉に向けた技術開発を推進する場所なのですが、そこばかりに限定してしまうと、利用の幅が狭まります。防災がテーマのゲーム開発であれば施設利用は検討できると思います」(小島氏)
次はいよいよ施設の内部に進む。
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