燃料デブリの処理をシミュレーション

「実際にどういった施設で構成されているんですか?」(渡辺氏)

「研究管理棟は廃炉に向けた作業者訓練を行うための最新のバーチャルリアリティーシステムなどを備えた施設です。また試験棟は原子炉の廃炉措置技術の実証試験や遠隔操作機器の開発実証試験を行うための施設です。ここには原子炉内の圧力抑制室(サプレッションプール)の実物大のものを、8分の1にカットしたモックアップも設備されています」(小島氏)

「サプレッションプールとは原子炉圧力容器の一番下に位置する部分ですね。約3000トンの水をためたドーナツ状のプールです。事故や何かしらの不具合で原子炉格納容器の圧力が上昇した場合、このプールの水で冷却し、圧力を低下させるわけだけど、福島第一原発では、どうやらこのプールのどこかに穴が開いていて、いくら水を入れても必要な水位を保つことができていませんね」(渡辺氏)

実際のモックアップを設置する様子。現在は壁に覆われており、全体を見ることはできない
実際のモックアップを設置する様子。現在は壁に覆われており、全体を見ることはできない

 どこに穴が開いているのか、放射線量が高すぎて人間が中に入って見に行くことはできない。遠隔操作のロボットを投入するなどして調査が行われているのだが、今のところ穴の正確な位置は特定できていない。

「福島第一原発の廃炉に向けた行程で、最も重要で難しいのが燃料デブリの処理です」(小島氏)

 燃料デブリとは、原子炉の事故によって炉内の温度管理設備が機能しなくなったことで溶け落ちた核燃料が原子炉のコンクリートや金属と混ざり合い、冷えて固まったものだ。これを取り出すことが廃炉作業の最大のネックとされている。

 福島第一原発2号機の格納容器の内部をカメラで確認する調査が今年1月30日に行われた。容器真下の床に、黒い堆積物が確認されたのだが、これが燃料デブリの可能性があると見られている。

東京電力が公開した画像。作業用の足場に燃料デブリと思われる堆積物がこびりついている
東京電力が公開した画像。作業用の足場に燃料デブリと思われる堆積物がこびりついている

 燃料デブリを取り出す作業については、東京電力が分かりやすい動画を公開しているので参照して頂きたい。

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