前編に引き続き、災害の「見える化」に取り組むキャドセンターを訪問。火災をバーチャルで体験させてもらった。東京大学の生産技術研究所とのコラボで生まれた火災のVR体験装置だ。さらに災害をバーチャルに体験できる『絶体絶命都市4Plus』にも対応するVRシステム「プレイステーション ヴィーアール」(PS VR)を体験するため、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)にもお邪魔した。“防災の鬼”渡辺実氏の舌鋒が今回も冴える。
「VR(仮想現実)のおかげで地震などの災害疑似体験が大きく変化している。地震は起震車や起震台でしか体験できなかったのが、これまでの限界。これがVRを使うことで、揺れだけではなく、地震によって被災する街全体が表現でき、それを360度視界に入れた疑似体験が出来るようになりました。同時に映画館で使われている4DX(注)と組み合わせれば、よりリアルに災害を疑似体験できるでしょう。
また、今後の避難訓練もこれまでとは全く違うものになってくると考えられます。例えば火災から逃げる訓練にしたって、もちろん実際に建物を燃やすわけにはいきません。あくまでも『燃えている体』でやらなければならなかった。ところがVRが進化していけば、火災をほぼ実体験できるんですよね。技術はそこまできています」(渡辺氏)
渡辺氏は現在、ソニーの「プレイステーション4(以下PS4)」用のVR対応ゲームソフト『絶体絶命都市4Plus』の監修を手がけている。なのでやたらとVRやAR(拡張現実)に詳しいのだ。
そもそも『絶体絶命都市』シリーズ(1~3)は、エンターテインメント・ゲームであり、その素材に地震や水害などの災害を取り扱っている。
絶体絶命都市4Plusは主人公が就職活動のためにたまたま訪れた街で大地震に遭遇、土地勘のない場所からいかに安全に避難するかを追体験するゲームだ。建物が倒壊し、道路は寸断。いたる所に破損した車が放置され、倒れた街路樹が行く手を阻む。そんな状況のなか、主人公は自らの命を守るために街を走りまわる。
「絶体絶命都市シリーズはゲームとしてのアプローチだけど、防災感覚を養うという意味では本当に重要な取り組みだと思っています。絶体絶命都市4PlusはVR対応なのでリアルさが半端ではない。恐いくらいです」(渡辺氏)
VRの技術を利用した防災への取り組みはゲームの世界だけではない。本稿前編でもおじゃましたキャドセンターの取り組みもユニークだ。
「東京大学生産技術研究所の加藤孝明研究室との共同で、『地震火災避難VR』というヘッドセット『Oculus Rift(オキュラスリフト)』で体験できるツールを開発しています」(キャドセンタープロデュースグループ営業2部の古川修氏)
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