100センチの浸水が容易にイメージ

 ARハザードスコープはスマートフォンやタブレットなどを持っていさえすれば誰もが無料でダウンロードできる。これを使って防災訓練をする自治体などもあるという。

「紙のハザードマップですと、まずは自分がいる場所を地図の上で見つける必要がありますが、ARハザードスコープはGPS情報と連動しているので現在地のハザード情報をすぐに表示できます」(河原氏)

「そういう意味では紙よりも断然使いやすいですね。浸水などのイメージについても、これまでは文字情報から、例えば「100センチなのか」などとしか理解できなかったけど、AR技術のおかげで見て感じることができるようになった。これは大きな違いです」(渡辺氏)

実際に人間や建物が映っている画面に 浸水想定高さなどの画像を重ねることで 洪水のイメージが容易にできる
実際に人間や建物が映っている画面に 浸水想定高さなどの画像を重ねることで 洪水のイメージが容易にできる
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 東京23区における「建物倒壊危険度」「火災危険度」などを表示してくれる「ARハザードスコープLite」を実際に使ってみた。

 アプリを立ち上げ、周りの風景にカメラを向けると画面上部に実際の映像に加えて想定される危険性のCG。下半分には地図にハザード情報を重ねた画面が表示される仕組みだ。

 例えば表示切り替えボタンから『避難所』『活動困難度』『倒壊危険度』などそれぞれをタップ。避難所を選択し、実際の風景にかざすと最寄りの避難所名と現在地からの距離と方向を表示してくれる

 スマホを片手に自宅の近所を歩いてみた。

 アプリを立ち上げGPS自動追従機能をONにした瞬間、素早く現在地を表示。緑の文字で、最寄りの避難場所とそこまでの距離を表示してくれた。気持ちいいくらいにサクサク動く。23区内に住まいや仕事場がある人にとっては本当にありがたいアプリである。

実際の風景に文字情報が重なる。 どんなに方向音痴でも避難所まで簡単にたどり着ける
実際の風景に文字情報が重なる。 どんなに方向音痴でも避難所まで簡単にたどり着ける
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 紙であれば1枚の地図に1つのハザード情報だったが、AR技術を使えば地震での倒壊状況、道幅の関係などで避難や救護活動が困難な場所など、複数のハザード情報を1つのアプリで確認できる。

「もっとも優れている点は携帯性ですよね。紙のハザードマップは四六時中持って歩くことは難しいけどスマホならポケットにいつも入っている。

 口が酸っぱくなるほど言ってるからそっちの耳にもタコができてるだろうけど、人は突然被災者になる。その時になって『ハザードマップがない』なんてことにならないためにも、こうした技術はどんどん進化してもらいたいですね」(渡辺氏)

 後編はいよいよ最新のVR防災について紹介する。

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