スマホやPCでは太刀打ちできない

「地震、津波、洪水、大規模な火災、そうした災害が起こって我々がサポートで現地入りすると、さっきもお話したとおり、まずは被災現地の地図を入手します。本屋などで地図を買い漁るわけ。すべてはそこから始まる。スマホやタブレットの地図も縮小拡大ができて便利なのですが、全体の被災規模を体感するとなると、やはり紙の地図にはかないません」(渡辺氏)

 製本されたゼンリンの住宅地図を切り取ってつなげあわせ、これを見ながら支援のための対策を練るのだ。実際には写真のように使われる。

広島市の土砂災害時、実際に使われた地図(ゼンリン提供)
広島市の土砂災害時、実際に使われた地図(ゼンリン提供)

「現地には全国から消防士、自衛隊や医師、また多くのボランティアの人たちが集まります。そうした人たちはもちろん現地に土地勘がありません。まずは地図が必要。病院、避難所、ボランティアセンターの本部などに一覧できる規模の地図を貼り出し、ここに様々な情報を乗せていきます」(渡辺氏)

 地図に貼られたフセンには被災の規模や安否情報、必要とされる救援物資の種類。避難民の数などなど、あらゆる情報が添付されていく。この連載で大規模水害に見舞われた常総市を取材したときも、ボランティアセンターの拠点には様々な種類の地図が張り出されていた。ゼンリンの地図も大活躍していたのは言うまでもない。

「スマホやPCの小さな画面で見ても被災のスケール感がわからない。また、データ地図は書き込みができなくはないが、非常に分かりにくいし、見てすぐ分かるようにカスタマイズするのは素人には困難です。被災現場には子どもからお年寄りまで様々な人がいらっしゃる。誰にでもわかるものでないと意味がないのです」(渡辺氏)

ぶら防での過去の取材風景(大規模水害に見舞われた常総市、2015年10月31日撮影)
ぶら防での過去の取材風景(大規模水害に見舞われた常総市、2015年10月31日撮影)

「そうですね。時代はどんどんデジタル化の方向に向かっているのですが、いざという時の紙の力といいますか多様性はスマホやPCが太刀打ちできるものではありません」(山本氏)

 2014年、広島県広島市の北部で起こった土砂災害のときも地図不足が原因で救助活動に一部支障が出た。

「弊社も、あのときは地図が足りなかった。県の緊急対策室、災害対策本部、あとはボランティアセンターどこにもいわゆるこの大判の地図がない。弊社でも急遽刷って持っていくのですが、まだ足らないからもっと作る。もうその時はもう、納品書も請求書も二の次。とにかく持っていく。これは地図屋としての意地と使命感ですね」(山本氏)

広島市では住宅地図を貼り合わせ、このような大型の地図を作った
広島市では住宅地図を貼り合わせ、このような大型の地図を作った

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