因みにJPモルガンは、トランプ効果を2017年半ばからの2年間で年率0.25%程度の底上げに留まると分析し、2017年と2018年の成長見通しをそれぞれ1.8%と1.9%という低水準に置いている。モルガン・スタンレーも同様に今後2年間の成長率は2%に止まるとの見通しを示している。筆者もそうした見方に同感だ。

 だが金利上昇への不安感を抱く債券市場が、深読みし過ぎて長期金利の急速な上昇を招くことがないとは言えない。インフレ期待感の高まりから長期金利が3%に接近するようになれば、景気後退懸念とともに株価が反落して2016年の上昇分を吐き出してしまう可能性すらある。

米中「G2時代」の到来

 そして、既に嫌なムードが強まりつつある米中関係が、第二の重要変数である。国際政治の場ではイアン・ブレマー氏が説く「Gゼロ時代」が人気を博しているが、国際経済や国際金融の世界ではやはり「米中のG2時代の到来」が現実的な認識だ。その米中経済関係の不安定化は、文字通り市場の大敵である。

 中国リスクといえば「またか」という顔をする人も多く、「聞き飽きた」という感想もあろう。だがリスクが存在する以上、そしてそのリスクが上昇中である以上、中国問題は避けて通れない。

 中国は過去15年間、WTO加盟と人民元の切り下げ方針で急速に競争力を高め、世界最大の輸出大国にのし上がった。その過程で多くのダンピング認定や為替レート論争を巻き起こしたのは事実だが、貿易戦争といった陰険な状況に陥ることはなく、妥協的な判断を踏まえつつ世界経済の成長にも貢献してきた。その穏健な交易の風向きは、中国と米国双方の国内事情で急速に変化し始めている。

 昨年末には、欧米が中国を市場経済国に認定することを拒絶したとしてWTOに提訴し、その報復措置のように中国が穀物類輸入への不当な高関税を掛けているとして米国が同国をWTOに提訴する「貿易紛争」が起きている。別に目新しい対立ではないが、選挙中に中国を槍玉に挙げてきたトランプ氏が大統領に就任する前から両国間で火花が散っていることは憂慮すべき事態だ。

 中国が先進国の支配する貿易ルールに不満を抱き続けていることは否定できない。習主席は経済改革派を排除しつつ、保守派に傾斜する政治体制の下で、特に対米通商問題に関して報復措置を含む強気な態度で臨むことだろう。

 一部には、トランプ氏が就任初日にTPP離脱を表明すると明言していることで、アジア・太平洋地域の通商交渉の主導権を中国が握り優位に立つ、といった観測も上がっているが、自己中心的なルールを策定しようとする中国への不信感は根強く、そう簡単ではあるまい。

 米中の経済関係は、お互いに激しい衝突を避けてきた過去15年間と違って、刺々しい場面が頻出することも想定される。その最大の理由は、両国の首脳がともに貿易を「ゼロ・サム・ゲーム」だと勘違いしていることだ、とFT紙は喝破している。