「トランプ狂騒曲」は続くのか(写真は関係改善を求めて米ニューヨーク・タイムズ紙の幹部と会合するトランプ氏。The New York Times/アフロ)

 市場には、トランプ次期大統領の経済戦略をレーガン時代のそれになぞらえる向きが増えつつある。1980年に地滑り的大勝利で大統領選を勝ち取った同氏の経済政策は「レーガノミクス」と名付けられ、財政政策による成長路線を切り開いて「強いアメリカと強いドル」の米国像を確立していった。

 現在の金利高・ドル高・株高の展開は、確かに当時を彷彿させるものがある。市場は減税や財政支出拡大への期待一色に染まっており、金利上昇やドル高が米国経済に逆風になるといった懸念などすっかり忘れてしまったかのようだ。

 FRBの12月利上げはほぼ確定的であり、来年以降も利上げ姿勢を継続するとの見方が強まりつつある。この財政拡張と金融引締めの構図は、まさにレーガノミクス時代の特徴と相似形であり、ドル高地合いの継続性をも示唆している。

 ドル円は113円台まで上昇し、ユーロドルも1.05台まで下落している。新興国通貨も対ドルで軒並み下落し、ドルインデックスは約13年ぶりの水準にまで上伸した。金利や株価は景況感を背景に今後上下変動する可能性もあろうが、ドルの上昇トレンドはまだ始まったばかりかもしれない。因みにレーガン時代は、大統領就任時期から4年間でドルは40%以上の上昇率を記録している。

 トランプ氏が本国投資法(HIA2)を導入し、現在大量に海外に積まれている米主要企業の海外資金の本国還流が税制によって後押しされれば、ドル高に弾みが付くだろう。ドル円は120円前後にまで上昇し、ユーロドルはパリティ(1ドル=1ユーロ)を突き抜けて2000年10月に記録した過去最低水準の0.8270ドルが意識されるような展開すらあり得よう。

年末年始は「日経平均は2万円を回復」の楽観論も

 トランプ氏の財政政策の具体策にはまだ不透明感があるが、米国が財政支出拡大への転機を迎えたことは事実である。因みに、大統領選が米国の財政政策の転機になったケースは少なくない。古くは1960年のケネディ大統領誕生が米国におけるケインジアン型財政主義の曙となった。1968年に政権の座に就いたニクソン大統領はベトナム戦争戦費調達のためにインフレ型予算を編成し、1980年のレーガン政権は大型減税を、1992年のクリントン政権はその反対に緊縮財政を財政政策の柱とした。そして2000年にはブッシュ大統領が再び大型減税に踏み切った。

 2008年のオバマ政権は金融危機への対応策として支援を行ったが、需要拡大のための財政拡張は、議会で多数を占める共和党に阻止され続けてきた。今回の大接戦を制したトランプ氏は減税やインフラ投資に意欲的である。上下院を共和党が制したことで、財政政策への方針が転換する可能性は高い。それが金利高を誘引し、ドル高を演出している。このストーリーは、簡単には書き換えられないだろう。

 金融政策から財政政策へのシフトはブレクジットで漂流し始めた英国でも期待されており、EU諸国にもその胎動が見え始めている。日本が参加表明するのも時間の問題だろう。だが、中でも最も成長ペース拡大への期待値が高いのは米国であり、それは必然的にドルの独り勝ち時代の到来を思わせる。ドル円の上昇は日本株にも追い風となり、年末年始には「日経平均は2万円を回復」といった楽観論が市場を席巻することになるだろう。