復活する企業の寡占・独占

 そしてもう一つは、国家主義的な資本配分を進めるロシアや中国だけでなく、本来市場メカニズムに基づく競争原理を成長源とするはずの米国などにも、企業の寡占・独占体制が復活し始めていることである。

 資本主義には、金融面で民間マネーが主導する時代と公的マネーが支配する時代が交互に現れる。現代がその後者であることは明らかだ。そして企業面では、大規模な少数派が事業を占有する時代と数多くの参加者が厳しい競争を繰り広げる時代とが入れ替わる。現代は間違いなく前者であろう。つまり、世界的に「公的マネーと独占企業」という非競争的な経済構造が生まれつつあるのである。

 特に米国ではアップルやグーグルなど情報やハイテクなどの業種で「超巨人化」が進んでおり、その優位性を世界の資本が支えている構造も明らかになっている。

 1980年代は、グローバリゼーションとともに国営企業の民営化や大企業の分割などが流行した時代である。競争は消費者にとってのコスト低減要因になり、技術開発も促進される。それは、1910年代から続いた寡占・独占体制への批判から生まれた構造だ、と英エコノミスト誌は指摘する。

 だが、少なくとも米国ではその時代はもはや終焉した、と言って良いかもしれない。米国上位100社が生みだすGDPシェアは1994年の33%から2013年には46%にまで上昇し、五大米銀の保有する資産シェアは2000年の25%から現在では45%に増大している。

 またグローバルな統計でも、世界の上位10%の企業が全体利益の80%を稼いでおり、年間売上10億ドル以上の企業が全体売上の6割を占め、時価総額では65%のシェアとなっている、とマッキンゼー・グローバル・インスティテュートは試算している。

 M&Aの件数が1990年代から約3倍に膨れ上がったことの意味も興味深い。大企業が中小のライバル候補を飲み込んで巨大化し、米国では1996年から2013年までの間に上場企業数が約3500社に半減してしまった。米国内での新興企業の立ち上げ数も1970年代以降、最低水準に落ち込んでいる。今日の米国経済が、先端技術力のある新興企業ではなく、資金力のある超巨大企業によって支配されていることは明白だ。

 その財務的安定性を担保しているのが、資産市場におけるインデックス運用の増加である。ブラックロックやバンガードなど大手資産運用会社が運用するインデックス・ファンドには、金融危機以降1兆ドルを超える資金が流入した、という。それが時価総額の大きな超巨大企業に一段と流れ込むという循環を促している。こうした「寡占化・独占化」が競争を歪め、低成長からの脱却に対する逆風になっている可能性もあるだろう。

 世界経済は、ほかにも所得格差の拡大や新興国経済構造の脆弱性、保護主義的傾向の増大など様々な構造問題を抱えており、政治的なソルーションが必要なものも少なくない。その解決にはまず、資本市場の価格変動率が一定水準に収まり、家計の消費意欲や企業の投資心理の状態が安定化することが必要である。金融政策がそれを邪魔するようなことがあっては本末転倒だ。