7月の米国貿易統計は、輸出が前月比1.9%増、輸入が同0.8%減となり、赤字額は11.6%減の394億7400万ドルと4カ月ぶりの赤字幅縮小となった。食品や工業用原材料、自動車関連部品など輸出の好調は7~9月期のGDP押し上げ要素として期待されるところだが、輸入減の主因はエネルギー関連製品ではなく消費財や資本財の減少に拠るものであり、特に中国からのモノの輸入が大幅減となっていることに注目する必要がある、と国連貿易開発会議(UNCTAD)は指摘している。

 米国の中国からの輸入額は今年3月から減少に転じ、輸入量も4月から減少し始めた。春以降の米国経済統計は内需の堅調さを示しており、ドルが底堅く推移していることから輸入は増加傾向を維持していてもおかしくないが、過去1年間の輸入総額を月を追って辿っていくと、2015年上半期に10%前後であったその伸び率は下半期以降下落傾向に転じ、今年はマイナスとなって7月には輸入額がマイナス3.5%、輸入量はマイナス1.6%とそれぞれ縮小が進んでいることがわかる。

 米国経済の柱は個人消費や住宅投資などの内需であり、FRBもそのトレンドは継続中と見て年内利上げの姿勢を堅持しているが、輸入額の動向にはもう少し目を光らせるべきかもしれない。それは米国市場に依存しがちな日本経済にとっても重要な問題であり、中国の異様な信用拡大による経済サポート戦術が、対米輸出の腰砕けで計画倒れになる危険性もある。

放置されてきた経常収支不均衡の問題

 基調としての米国の貿易収支は、輸入減が輸出の頭打ちで相殺され、赤字構造はさほど改善していない。そして中国の黒字傾向も、輸出減と輸入減によって変わっていない。ドイツは相変わらず高い輸出競争力で貿易黒字を貯め込み、エネルギー資源輸入の急増で貿易赤字国となっていた日本も、黒字に転換し始めている。

 それは、金融危機前に話題になっていた「経常収支不均衡の拡大」というアジェンダを思い出させる。低成長からの脱却手段として、エコノミストの関心はいま金融政策の修正、財政政策の拡大、構造改革の必要性、労働生産性の向上、法人税減税といった面に集中している感が強いが、この経常収支不均衡問題も忘れてはならない視点だろう。

 世界の資本が投資意欲の乏しい経常黒字国に集中する構造は、依然として変わっていない。金融危機の再来を回避すべく、2010年から2011年にかけてG20において経常収支問題が採り上げられたこともあったが、各国の意見調整が出来ぬまま、この根本問題は放置され続けている。

 HSBCに拠れば、主要国間の不均衡は2015年以降拡大を続けており、現在では2007年とほぼ同水準にまで達している、という。こうした不均衡が、世界的な投資水準の低さや非効率性を通じて世界的な「長期停滞」の一因になっていることは否めない。