イタリア最古の銀行、モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(写真:ロイター/アフロ)

 7月は米国市場でのダウが9連騰してS&P500とともに最高値を更新し、円高で出遅れ気味であった日経平均も政策期待やポケモンGO効果で大きく切り返した。株式市場だけを見ていると、世界の景気が上向いたかのような錯覚を受ける。実際には、IMFが今年の世界経済見通しを下方修正したように、各国は成長ペース失速の瀬戸際に立たされている。

 ブレグジット・リスクはむしろこれからが本番であり、世界経済は反自由主義の波に押されて袋小路に追い詰められようとしている。中国ではいま開催中の非公式会合「北載河会議」において、政治リスクが経済リスクに点火しかねない情勢が浮上しつつある。景況感がまずまずの米国にあっても、世界最大の資産運用会社ブラックロックの創設者であるラリー・フィンク氏は、企業決算次第では現在の株高は短命に終わる可能性がある、と警告している。利上げ観測に伴うドル高は、確かに潜在的な米国経済リスクになり得るだろう。

 日本ではあまり報じられていないが、世界貿易にちょっとした異変が起きていることも注目に値しよう。オランダ経済統計分析局のデータに拠れば、2016年4月の世界貿易量は2014年12月の数字とほぼ同水準となっていることがわかる。つまり、貿易量はここ1年半で殆ど増えていない「ゼロ成長」に陥っているのだ。これは、景気後退期を除けば極めて珍しい状況である。

 この背景には、原油に代表される商品価格の急落やグローバル・サプライチェーン拡大の一服などが影響していると思われるが、貿易分析に定評のある英国のGlobal Trade Alertは、そうした要因よりも反グローバリゼーションの機運拡大に伴う貿易縮小の影響度が大きい、と分析している。11月の米国大統領選挙に向けて「アメリカ第一」を叫び続けるトランプ氏への支持率は持ち直しており、その保護主義的政策は経済縮小傾向を加速しかねない。

 そうした分析をベースラインにおいて金融システムを眺めてみると、脆弱なポイントが幾つか浮かんでくる。本コラムで既に何度か指摘している中国金融以外の要因として、イタリア金融システム、ドイツ銀行の経営、英国不動産市場、米国の資産バブル、という4つについて、現時点で気になる点をチェックしておこう。

 いずれも、直ちに危機を引き起こす可能性は低いように見えるが、金融システム・リスクにおけるバタフライ効果を読み解くのは年々難しくなっている。トルコのような地政学リスクも、思わぬ攪乱材料になり得る。この段階で一度、市場に潜伏する金融リスクの症状を診断しておくことは決して無駄な作業ではないだろう。