世界の状況は、1930年代の保護主義的時代に類似する点がある。写真は1933年、ニューヨークで仕事を求めて行列する失業者(写真:AP/アフロ)

 波乱の幕開けとなった2016年の市場も、2月中旬以降は安定感を回復してきた。だが世界中の実体経済を見渡せば、先進国も新興国も決して好調な先行きを期待できるような状況にはない。伊勢志摩サミットで安倍首相が述べたようなリーマン危機の再来を念頭に置いている訳ではないが、増加の一途をたどる中国の不良債権や腑に落ちない米国FRBの利上げ姿勢も、市場に新たな火種を撒き散らそうとしている。

 原油市場は需給の崩れが改善するとの見通しから俄に強気派が増えてきたが、サウジアラビアは石油相の世代交代を通じて増産姿勢を見せており、再び価格の不安定性が蘇る可能性は高そうだ。

 また新興国市場の安定化は景気回復の効果だとの見方もあるが、それは過大評価だろう。中国の景況感改善は信用拡大を通じた景気刺激策に拠るものであり、これを健全な成長の姿と見るのは相当に無理がある。他の新興国市場でも、FRBの利上げ観測が高まったことで、再び通貨や株価に強い下押し圧力が掛かり始めている。

 新興国には、ブラジル大統領の弾劾決議、サウジの急進的改革方針、トルコの首相辞任、フィリピンのポピュリスト大統領就任、中国のパナマ文書騒動など、政治リスクも満載だ。政治不安が市場不安を呼ぶのは新興国の定番であるが、政治の不穏な動きが市場を脅かそうとしている構造はいまや先進国にも波及しつつある。

先進国にも吹き始めた政治リスクの風

 これまで市場は、先進国の金融当局における政策判断に全神経を集中してきた。現時点でも、米国の利上げ時期や日欧の追加緩和時期など、不透明感や期待感が渦巻く土壌に変わりはないが、中央銀行に焦点を当てるだけで今後の市場の嵐を切る抜けることは出来ないだろう。先進国にも政治リスクの季節風が吹き始めているからだ。

 まずは6月23日に英国のEU残留・離脱を問う国民投票があり、その3日後には緊縮財政で世論が真二つに分かれているスペインで総選挙のやり直しが行われる。難民問題でも欧州は解決策を見いだせていない。

 先月のオーストリアの大統領選挙では、リベラル派が極右勢力を排して辛うじて勝利したが、その僅差の勝負はフランスやイタリアなどで気勢を上げる極右政党の士気を鼓舞したに違いない。ECBは、そうした「ポピュリスト・リスク」が構造改革を遅延させ、成長に悪影響を与える、と警鐘を鳴らしている。

 そしてその後には、米国大統領選挙という世界最大の政治イベントが控えている。クリントン氏で決まり、といったムードはもはや消え去り、トランプ氏勝利の可能性が出てきたことで、市場も「トランプ時代」の相場シナリオを意識せざるを得なくなってきた。投資家は、もはや原油や中国、中央銀行だけに注目していれば良いという状況にはない。