英国ではEU残留・離脱を問う国民投票が6月に行われる。最近では「想定外のイベント」が市場経済を襲うことが稀ではなくなっている(写真:ロイター/アフロ)

 先週の日銀による追加緩和見送りは、期待感で盛り上がっていた円安・株価ムードを吹き飛ばした。市場が独り相撲をとったという感も強いが、日銀のコミュニケーション力の欠如があらためて明らかになった現象とも言える。市場と日銀が繰り広げる消耗戦は、日本の金融が狂い始めたことを示唆しているようにも見える。

 但し、市場ムードの変調に限って言えば、日本に限った話ではないかもしれない。年初の急落場面から見事に切り返していた米国株にも、一服感が出始めているからだ。

 2月中旬から反発地合いに転じた米国市場では、先月ダウが9カ月ぶりに1万8000ドル台を回復し、S&P500も昨年12月以来の2100ポイントに達して昨年5月に付けた過去最高値に接近するかのような勢いであった。NADAQも5000の大台復帰まであと一息の水準にまで回復していた。中国不安の後退、原油価格の底入れ、ドル高修正への動き、そして決算への懸念が薄れたことなどが、その急回復の背景にあった。だが、流石にその持続性を疑問視する向きが増え始めている。

 先週の日本発の株価急落は、世界的に景気見通しの冴えない中で株価が上昇し続けることの異常さを客観的に見直す、一つの契機になるかもしれない。年初来、市場を振り回してきた中国、原油、米国利上げといった三大リスク以外に、欧州という心の準備が必要なリスクも浮上してきた。

 英国のEU残留・離脱を問う6月23日の国民投票に関しては、賭けのオッズでは依然として残留派が優勢であり、ポンドも戻り基調にあるが、世論調査では不透明感が強いままである。離脱となれば、世界的な「リスクオフ」の再来は必至だ。同国内の残留・離脱それぞれの陣営間の論戦は白熱化しており、投票日まで予断を許さぬ日々が続くだろう。

 そして翌月に支払期日が来るギリシアの利払いに関しても、デフォルト懸念が再燃する可能性が強まっている。IMFが昨年7月にEUが示した第三次支援スキームへの参加を渋っているからだ。ギリシアは7月にECBに対して35億ユーロの利払いをする必要があるが、恐らく国庫にカネはない。だがIMFの合意なしにはドイツ議会は支援しない姿勢を保っている。欧州情勢は、あまり芳しい状況にはない。

目先の辻褄合わせをするだけの中国

 不安が後退したように見える中国も、いつどこで問題が勃発するか解らない伏魔殿である。確かに資本流出懸念や経済のハードランディングへの警戒感が和らいで、株価や人民元の急落リスクが低下しているのは事実だ。好調なサービス産業が輸出産業の不調を埋めるなど、明るい材料も出てきた。IMFは今年の同国成長見通しを6.3%から6.5%に上方修正している。

 だが、中国が抱える重層的な問題が解消されたとは誰も思っていない。ソロス氏は「中国は2007-8年の米国と同じだ」と言って憚らない。社債市場でのデフォルトが目立ってきたのは特筆される。また供給過剰対策ではなく需要拡大を目指そうとする経済政策は、根本的に誤っているように思える。3月の新規社会融資総量は2.3兆元と前月の7802億元から3倍近くに伸び、うち人民元建て新規融資額が1.4兆元と前月から倍増していることを見ると、背筋が寒くなる。