3月第2週に米国のエネルギー情報局(EIA)が発表した国内原油在庫量は前週比821万バレル増と予想だにしなかった急増となり、原油市場は一気に冷え込んだ。国内生産増、輸入増、消費減という構造での9週間連続の在庫増はWTIの50ドル割れを誘い、一時47ドル割れ寸前まで下落することとなった。

 さらにOPECの2月報告書に拠れば、加盟11カ国の生産量は日量ベースで前月比14万バレル減の3196万バレルと減産合意が遵守されており、サウジも6.8万バレル減の979.7万バレルとなっていたが、国別の申告ベースではサウジの生産量は26.33万バレル増の1001.1万バレルと増産になっていた。

 サウジのエネルギー省はOPECの報告書公表直後に「減産へのコミットは継続中だ」と異例の声明を公表し、過剰分は備蓄に回しており市場への供給量は減少している、と釈明している。だが市場の疑心暗鬼を払拭することは難しいかもしれない。親分が約束を守らないのなら、渋々従った子分が造反しても不思議ではない。

 仮にOPECなどの減産が続いても、米国のシェールオイル増産基調は継続中だ。同国内における需要増期待も「口だけ(指だけ?)大統領」の政策が頓挫すれば、一気に萎んでしまうリスクを抱えている。

 市場には景気が拡大しても、電気自動車の普及などにより原油需要は期待されるほど増えない、という構造的問題も指摘されている。それは、特に公害問題対策に苦慮する中国で顕著になるだろう。先の長い話ではあるが、少なくとも原油価格が恒常的に上昇基調を保てる可能性はそう高くないのではないか。

 原油価格反発シナリオが揺らげば、FRBなどが描いている予想物価動向の軌跡は少し狂い始めるだろう。エネルギー業界の投資計画が見直され、株価に影響することも想定される。

 原油価格の低迷期間が続けば、ヘッドラインのインフレ率上昇にはブレーキが掛かり、コア指数の頭打ちが鮮明になるかもしれない。金利の正常化がどこかで曲がり角を迎えることも有り得よう。

地政学リスクの台頭

 そして最後に政治リスクを採り上げておこう。昨年のブレグジットとトランプ氏の勝利に続く排他的、保護主義的な傾向が欧州で懸念されているが、オランダでの総選挙で見られるように極右勢力の台頭には限界が見られる。万が一、フランスでル・ペン氏が大統領選に勝利したとしても、フランスのEU離脱には憲法改正という高いハードルがそびえ立つ。フランス大統領には外交など強い権限があるものの、内政に関しては政府・議会が主役なのである。

 欧州の真の政治リスクは、メルケル首相の退陣シナリオであろう。現在、世論調査で同首相は社会民主党(SPD)のシュルツ党首に差を付けられている。その勢いが秋の連邦議会選挙まで続くかどうかわからないし、シュルツ氏は欧州議会議長を務めたほどの人物であり、仮に首相交代となってもドイツが反EUに傾くとも思えない。問題は、EUを支えてきた「一本足」の軸足であったメルケル首相が居なくなるという心理的リスクである。