また「ドット・チャート」が示している今年あと2回、来年3回、再来年4回と いった利上げ見通しにも、あまりに経済に対する楽観が入り込んでいるように思われる。何故ならば、米国をはじめとする世界経済は本当に「長期不況説」を振り払うことに成功したのか、という疑念が氷解していないからだ。

株高・金利高は真の夜明けなのか

 確かに世界的に景気回復感は強まっているが、似たような状況で空振りに終わったケースもある、と英エコノミスト誌は警告している。1990年代後半の米国におけるIT主導の景気回復は「ジョブレス・リカバリー」を克服したかに見えたが、結果的には失敗に終わった。共通通貨導入に湧いたユーロ圏も、ドイツ・フランス勢などによる無節操なギリシア国債投資で行き詰ってしまった。

 確かに、株高やGDPあるいは雇用統計だけで金融危機の後遺症から完全に立ち直った、と診断するのは早計だろう。デフレ的な体質からの脱却には、貯蓄と投資の不均衡解消が不可欠である。革新的な技術革新が起きて企業が一斉に設備投資に踏み切ったり、格差拡大の解消によって中間層の所得が増え消費が増加したり、将来に果実を残すインフラ投資が実現したり、新興国が国内プロジェクトへの投資を活性化したり、といったアクションが生まれてこそ、長期不況への懸念を払拭することが出来る。

 だが現時点では、好調な経済状態にある米国ですらその兆候が見えない。金融緩和策の下でも企業の投資意欲はエネルギー業界など限定的な産業であり、株式市場には期待先行の匂いがついて回る。世界的に見た負債残高は増えているが、その大半は中国国営企業を中心とした後ろ向きの負債増であり、その危ういファイナンスが何とかデフレ感を抑制しているに過ぎないのかもしれない。

 今日のセンチメントの明るさは、トランプ効果に拠るところも大きい。だが同大統領のリフレ策は目先の需要を押し上げるだけで生産性上昇にはほとんど寄与せず、むしろ悪性インフレをもたらすリスクがある。また、同政権が議会工作に失敗する可能性もないとは言えない。

 米国の金利高が債務増ペースを加速している米家計の負担増となって消費を抑制したり、新政権による移民排斥が住宅需要を押し下げたりするリスクを指摘する向きもある。そして日本や中国などには、構造改革の遅延といった厄介な問題も残っている。昨今の株高や金利高が、真の夜明けを意味しているのか、まだ確証を抱くことは出来ない状況だ。

揺らぐ原油価格反発シナリオ

 そして、改善しつつある物価見通しに逆風となりそうなのが原油市場である。昨年2月に20ドル台まで下落した原油価格はその後徐々に持ち直してきた。昨年末にはサウジが増産放置から方針転換してOPECによる減産合意を取り纏め、これに非OPECが減産で協調し、先高観が強まった。これまで必ずしも合意を守ってこなかったOPEC諸国が足並みをそろえたことで、市場はその本気度を確認したのである。

 これに加えて、トランプ効果に拠る米国内の需要増予想が原油市況の需給改善を加速させる、との思惑も浮上した。だが、そんな楽観論を吹き飛ばすような材料が米国とサウジの双方から現れた。