トランプ大統領自身も、イスラエルのネタニヤフ首相との会談で「2カ国共存にこだわらず」「エルサレムへの大使館移設」といった危険な発言を繰り返すなど、新政権の不安定さは一段と増幅中である。メイ英首相や安倍首相との首脳会談に比べ、格段に難易度の高い欧州や中東での協議における思慮無き発言は、大変なツケとなって米国に跳ね返ることだろう。

 前述したフリン氏の更迭問題に関しても、大統領はまだ同氏を擁護する発言をしている。それはトランプ・プーチン両大統領間の怪しい関係への疑念を強めるだけの結果になっている。

 それでも株式市場がこうした政治リスクにさほど反応していないのは、景況感が明るいことに加え、主要閣僚の顔が揃えばいずれホワイトハウスにおける異端者バノン氏や保護主義派ナヴァロ氏らの影響が弱まって、実務家を中心としたビジネス寄りの政策へと転換する、と考えているからだと思われる。

 国家経済会議のコーン氏は直前までゴールドマン会長を務めた猛者であり、国務長官のティラーソン氏はエクソン・モービルの前会長、商務長官に指名された著名な投資家であるロス氏は実務家としての経験が長く、財務長官のムニューチン氏も小粒ながらウォール街出身者だ。こうした面々が米国経済に逆風となるような愚策を採るはずが無い、という市場の思惑が政治リスクへの警戒度を引き下げているのである。

米国企業も「二分化」する国境調整

 だが大統領の減税策に盛り込まれるであろう国境調整は、大変な曲者である。日本からの輸出や米国に進出済みの企業には深刻な話なので、詳細に関しては会計の専門家に相談されるべきだが、大雑把に言えば法人税を付加価値税のように仕向け地での利益に課税し、輸入にはすべて課税するという方式だ。輸出企業を助成し、海外からの輸入を抑制する効果があることは一目瞭然だろう。

 だが当然ながらこの課税方式では、海外から輸入して国内販売を行う米国内の輸入型企業にも大変なコスト増になる。今月、ウォルマート・ストアーズやギャップ、ナイキそしてトヨタ米国法人など約200社の企業が「Americans For Affordable Products」なる団体を設立して猛烈な反対キャンペーンを張っている。輸出シェアの小さい製造業にも、減税メリットは薄く原材料価格が上昇する分だけデメリットが増える。トランプ政権は、米国国民だけでなく米国企業までも「二分化」してしまいそうだ。

 そもそもこの国境調整には、米国の高い税率を嫌がってアイルランドなど国外の低税率国に本拠地を移す「インバージョン」を封じ込める目的があったとされるが、同時に1990年代に欧州との「紛争」に敗れたことへの報復だという見方もある。