そのフランスでは、流石にル・ペン氏が大統領に就任するとの見方は少数に止まっているが、昨年の英米における教訓を忘れるべきではない、と警告する声も強まっている。極右政党の国民戦線(FN)を率いるル・ペン氏が4月23日の第1回投票で勝ち残るのはほぼ確実と見られているからだ。

 先月行われた「Ifop-Fiducial」による世論調査では、同氏の支持率が約26%でトップ、約24%に止まったフィオン氏をリードしている。もっとも、5月7日の決選投票での形勢不利は否めず、一騎打ちとなった場合の支持率ではフィオン氏が64%でル・ペン氏は36%と大きく差を付けられている。

 但し、フィオン氏が1カ月前の調査から支持率を落としていることも事実である。昨今勢力を伸ばしているのが無所属で立候補したマクロン元経済相であり、決選投票での組み合わせ次第では、ル・ペン氏が勝ち残る可能性も無いとは言えない。

 世論調査が当てにならないことも実証済みであり、市場は常に「まさかのシナリオ」を念頭に置かざるを得なくなっている。仮にル・ペン氏が当選すれば、EU離脱(フレグジット)とユーロ離脱がメイン・アジェンダに据えられることは間違いない。最近の講演でも同氏は「早期にユーロ建て国債をフラン建て国債に切り替える」と公言している。そんなユーロ離脱観測への市場懸念は、ギリシア問題の比ではあるまい。

 オランダとフランスの選挙の間にイタリアやギリシアが総選挙の前倒しを行うようなことになれば、世界は欧州情勢をアップデートするのに一苦労することになるだろう。

リスクを増幅するドイツの物価上昇

 そしてドイツの総選挙にはまだ時間があるとはいえ、同国の社会情勢が欧州政治リスクを増幅しかねない要素があることも無視できない。その兆候が、同国におけるやや唐突な物価上昇である。

 ドイツの12月消費者物価指数は前年同月比1.7%上昇となり、前月の1.1%上昇から急上昇している。その数字は、インフレに超敏感な同国民にとって気になる数字だろう。ユーロ圏全体では1.1%の上昇とまだ目標値には遠く、ECBは12月に導入した政策の現状維持を決定しているが、その理事会議事要旨ではドイツを含むと思われる一部の国々が資産買い入れ延長に反対したことが明らかになっており、1月も白熱した議論が展開された可能性が高い。

 記者会見においてドラギ総裁は、足許の物価上昇は原油などエネルギー価格の上昇に拠るもので、構造的に見て物価上昇傾向は定着していない、との見方を示している。確かにOPECや非OPEC諸国の減産合意で原油価格が持ち直した影響は小さくない。ユーロ圏のコア物価指数は前年同月比0.9%と低水準に留まっている。同総裁は、景気のリスクは依然としてダウンサイドにあるとの見方を示しており、緩和姿勢を変更する気配は感じられない。