英国にとってもこの代替案は得策とは言えないところがある。法人税の大幅引き下げで、財政赤字が急拡大するのは不可避であるからだ。因みに1%の減税で英国の歳入減は約20億ポンド(約2800億円)と試算されており、10%規模の減税となれば毎年約3兆円の赤字拡大となってしまう。また英国の金融街は約90億ポンド(約1兆2600億円)の利益を喪失するとも試算されており、減税とシティ縮小という2つの穴を「プランB」で埋めるのは夢物語だろう。

 さらに先月、英最高裁が「EU離脱通告には議会承認が必要」との高等法院の判断を8対3で支持したことで、敗訴した英政府は早々に議会に対して承認を求める法案を提出せねばならなくなった。

 議会にはEU残留派も多いが、国民投票の結果を軽視することはできない。但しメイ首相の強硬方針に反対する労働党やスコットランド民族党(SNP)などは、路線変更を求める修正案提出を準備している。態度を表明した同首相は容易には妥協できないだろうが、それが審議の長期化や通告時期の延期などを呼ぶ恐れもある。そのブレグジット戦略がどこかで挫折し、メイ政権が崩壊へと追い込まれるようなサプライズも無いとは言えまい。

注目せざるを得ないオランダ総選挙

 また、ハード・ブレグジットの背景にある移民流入への反感の強さは、大陸諸国における「反EU勢力や極右勢力」を元気づけている。周知の通り、今年は3月のオランダ総選挙を皮切りに4~5月にフランス大統領選挙、そして11月にはドイツの連邦議会選挙が予定されており、イタリアやギリシアでも総選挙が前倒しされる可能性が浮上している。筆者の知る限り、オランダの総選挙が国際金融市場の話題になった記憶はないが、今回は流石に投資家も同国の政治リスクには注目せざるを得なくなっている。

 オランダの総選挙は3月15日に行われるが、どの政党も単独で過半数を取ることは無さそうだ。与党の自由民主国民党は、現時点で世論調査の首位に立っている極右政党の「自由党」の後塵を拝すことは確実だ。

 極右政党として勢力を伸ばしてきた自由党を率いるウィルダース党首は、移民への過激な発言で有罪判決を受けるなど反イスラムのヘイトスピーチや反EU姿勢で知られるが、一部国民の間での人気は衰えていない。だがそれは、連立を組む相手が居ないことを意味している。今回第一党となっても議席数は25%程度と予想されており、恐らく政権には就けないだろう。

 現実には、第二党以下の政党が連携する連立政権になる可能性が高いが、少数党での政権樹立も容易ではない。そもそもオランダでは総選挙後の政権が発足するのに数カ月を要することが多い。2012年には約2カ月、2010年には4カ月以上掛かった。戦後平均は72日である。今回も組閣でもたついているうちに、フランスの大統領選が始まるかもしれない。その政権樹立過程で自由党が存在感を示すようなことになれば、ル・ペン氏を勢い付かせるような展開にもなり得る。