CM制作でビジネスの基礎を学ぶ

國井:なぜDJ以外にも活動を広げることになったのでしょう。

マスイ:広告宣伝費が縮小していって、インターネットが登場したことが大きかったですね。自分で会社を立ち上げてコマーシャルを作ったんです。自分たちでナレーションして映像を編集し、曲を書いたから、広告代理店経由の3分の1の経費で大企業に提案することができた。

國井:それが好評だった。

マスイ:はい、自分で作ったCMをプレゼンして、自分の番組でオンエアされるとやはり説得力が増すわけですよ。リスナーからもクライアントからも反応が良かったんです。

國井:そこでビジネスのストラクチャーを学んだのですね。

マスイ:そうです。いまはEDGEofと音楽を同時に進めていることが大事だと考えています。音楽だけをやっていたら、趣味、生活で触れている範囲のことを音に反映するということは話し合えるけれども、社会全体を俯瞰して多面的に物事をとらえたり、イノベーティブなことを提案したりすることはできないと思うんです。

國井:1つを極めるのも大変なのに、ケンさんはいろいろなことを極めています。お話を聞いていると大事なのはやはり出会いで、一流の人たちと出会い、育てられて、また周りを育てているという感じがする。まさに化学反応を起こして世界をつくっているイメージです。

マスイ:ありがとうございます。小林武史さん、桜井和寿さん、孫正義さん、泰蔵さん、サッカーの本田圭佑……全員と仕事をしたことがあるんです。そういったトップの人との縁に恵まれるのはなぜなのか、自分自身でも研究材料になるんじゃないかと思って、いま『他力本願』(仮タイトル)という本を執筆しているところです。

國井:全くタイプが違う才能を持った方たちですよね。

マスイ:でも結局みなさん、考えていること、やっていることは一緒ですね。同時にいくつもの構想を手掛けていても、軸は全然ぶれていない。

次ページ 「何をするか決めない」という選択