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子どもの痛みに寄り添う遊戯療法

國井:健さんはテント村の活動をしながら、被災者の苦しみに寄り添っていましたね。被災者は災害に遭った恐怖体験や身内の命や家の損失といった心的トラウマに加えて、避難生活の中でもストレスがどんどんたまっていくでしょ。それを癒やす万能薬はなくて、結局はそれぞれ個人が自分自身でその苦しみと向き合うしかない。心の傷は体の傷と同じで、治るには時間がかかるんですよね。そう言えば東日本大震災のとき、僕はユニセフとして支援に参加したんだけど、被災した子どもの心のケアとしてプレイセラピーというのがあるんですよ。

野口:ゲームとかですか。

國井:というか、遊戯療法といって、怪獣のミニチュアなどを渡して子どもたちに自由に遊ばせる。遊びを通じて、セラピストが子どもの心の痛みや苦しみに寄り添ってあげて、閉ざした子どもの心を解放したり、心の内にあるものを言葉にしたり、遊びで表現したり……。セラピストは治すんじゃなくて、心の傷がうまく癒されるようにケアしてあげてる感じでした。でもね、「津波だー」とか言って自分の持ってる車とかを投げ飛ばしたり、他の子どものミニチュアを蹴ったり、通称「津波遊び」なんかもよく見かけました。

野口:ええーっ。

國井:素直な子どもの心の表現だからね、「それはやっちゃいけない」じゃなくて、セラピストは語りかけながら見守ってましたね。自由に津波体験を表現する中で、少しずつその出来事を子どもなりに反すうして理解して。こうやって心が癒やされていくのかなと思いましたね。

 ところが、大人に関してはそういう活動はなかなかない。精神や心理の専門家による心のケアというのがあって、それを必要とする人もいるんだけど。被災者の中には「そともんに被災したもんの気持ちはわからん」とか、「つらいことがあったら話せとかいうが、話せん」とかいう人もいる。

 一般の人に「どんなストレス発散方法があるか」と聞けば、酒を飲む、たばこを吸う、音楽を聴く、カラオケを歌う、とか個人個人いろんな答えをする思う。でも被災者が毎日のストレスを酒やタバコ、カラオケなどで発散したいと言って、ボランティアが酒やタバコを買ってきたらおそらく白い目で見られるし、マスコミで叩かれるかもしれないよね。健さんも白い目で見られてたね(笑)。

野口:娯楽ではないけど、テント村でよかったのは、タープができて自炊するようになったことですね。3食コンビニの弁当が届くのは助かったけど、食欲がなくなる。出されたものをただただ食べると生活のリズムも狂うので、自炊をすすめたんですよ。昼間は車で仕事に行って、帰りにスーパーで買い物して料理する。避難所生活でも、好きなものを作って食べて酒を飲んで。夕方歩いているとタープの中からすき焼きの匂いがしてうまそうだなとか、楽しそうでしたね。